トップ国際中南米経済危機で中国依存拡大 アルゼンチン 「人民元の国際化」に合致 

経済危機で中国依存拡大 アルゼンチン 「人民元の国際化」に合致 

デフォルト再来の恐れ

アルゼンチンのフェルナンデス大統領(左)と中国の習近平国家主席=2022年2月6日、北京(アルゼンチン大統領府提供)(AFP時事)

経済危機にある南米アルゼンチンが中国との関係を深めている。今年10月に大統領選挙を控える中で、左派フェルナンデス政権としては、デフォルト(債務不履行)などの経済破綻だけは避ける必要があり、人民元による貿易決済や中国とのスワップ拡大は不可欠なものだ。中国としても、「人民元の国際化」に向けてアルゼンチンは重要なパートナーだが、経済基盤が不安定な国への投融資拡大は、両刃(もろは)の剣となる可能性をはらんでいる。(サンパウロ・綾村 悟)

アルゼンチンは2016年3月、同国沖合で違法操業を行っていた中国漁船を沿岸警備隊が銃撃・撃沈した。当時のアルゼンチンは中道右派のマクリ政権で、前政権の親中路線を見直しする中で起きた事件だった。

中国漁船による違法操業は近年、世界各地で問題となっており、特に中南米では中国船籍の大船団による違法操業が海洋資源の枯渇につながると警告されている。

アルゼンチンの保守政権は当時、中国船の違法操業に毅然(きぜん)とした対応を行った。沿岸警備隊の警告を無視するだけでなく、体当たりなどの暴力行為を行う中国船に対して反撃を躊躇(ちゅうちょ)しない姿勢は、同じく中国漁船の違法操業に苦しんできた国々から称賛された。

ただし、マクリ保守政権は1期で終わることになる。マクリ氏は、左派政権下のバラマキが生んだ膨大な財政赤字や債務を圧縮して経済の立て直しを図ったが、19年の大統領選挙では、年金や社会保障の増額を訴える左派のフェルナンデス候補に支持が集まった。

中国漁船撃沈事件から7年が経過した現在、アルゼンチンと中国の関係は百八十度変わった。19年末に左派政権が復活すると、再び親中路線に転換したのだ。

中国との2国間貿易が178億㌦(約2兆5千億円)に拡大する中、フェルナンデス政権は昨年、中国が提唱する巨大経済圏構想「一帯一路」に参加。これにより、中国からインフラ整備を中心に237億㌦(約3兆3000億円)もの融資を受けることになった。

融資の中には、中国国営企業によるアルゼンチンでの軽水炉型原発建設も含まれる。原発建設は、左派政権時代の15年に合意していたが、保守マクリ政権によって白紙に戻されていた事業だ。

今年に入り、中国との結び付きは、アルゼンチンが深刻な経済危機に直面する中でますます強くなっている。

新型コロナウイルス禍に加え、旱魃(かんばつ)が不況に追い打ちをかけた。通貨ペソは対ドルで暴落し、物価は昨年比で2倍にもなった。市民の生活は困窮し、デフォルト再来も予想される事態だ。政策金利は97%と世界最悪の水準となっており、通貨防衛と外貨準備の確保は最重要課題となっている。

こうした中、アルゼンチン政府は4月、中国から輸入する商品に関して、決済通貨を米ドルから中国人民元に切り替えることを発表した。ドルの流出を防ぐためだ。

アルゼンチンと中国は先月、元建てによる通貨スワップ1300億元(約2兆6千億円)の3年間延長に合意。さらにアルゼンチン側が通貨防衛のために自由に使えるスワップ額を700億元(約1兆4000億円)にまで拡大した。

アルゼンチン国内では現在、人民元を利用した商業活動が活発化しており、銀行での人民元の口座開設も法人を中心に拡大しているという。

アルゼンチンが経済危機から脱するために中国への依存を高める中で、元の国際化を進めようとしている中国側の思惑も合致した格好だ。ただ、経済基盤が強固ではない国との通貨スワップの拡大は、中国にとって債務不履行時のリスクなども抱えることになり、両刃の剣になりかねないところだ。

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