
【サンパウロ綾村悟】南米ブラジルの高等選挙裁判所(TSE・選挙高裁)は30日、権力乱用などの疑いでボルソナロ前大統領(68)の被選挙権を8年間停止するとの判決を下した。ボルソナロ氏は保守派の間で幅広い人気があるが、2026年に実施される次期大統領選挙に出馬できない可能性が出てきた。
ボルソナロ氏は昨年7月、大統領官邸で、ブラジルが採用している「電子投票システム」に欠陥があり、改竄(かいざん)などの不正が行われる可能性が高いことなどを主張した。その様子は、国営テレビやSNSなどを通じて全国に伝えられた。
ボルソナロ氏と議会で対立していた左派政党が昨年8月、大統領が選挙前に選挙制度を批判したことは権力乱用に当たると主張、選挙高裁にボルソナロ氏の被選挙権剥奪を求める訴えを起こしていた。
昨年10月の大統領選挙では、左派のルラ大統領有利との下馬評を覆してボルソナロ氏が善戦し、決選投票まで激戦が繰り広げられた。
30日の判決では、7人の裁判官のうち5人が「権力の乱用に当たる」との判断を下した。ボルソナロ氏は、今回の判決に対して「背中から刺されたようだ」と批判、同氏の弁護団は最高裁に上訴する考えを示した。
現在ボルソナロ氏は、今年1月に発生した連邦議会等襲撃事件への関与や、サウジアラビアから贈呈された宝飾品の私物化などを巡って捜査も受けている。
ボルソナロ氏は、保守派のカリスマ的な存在としてキリスト教福音派などの間で根強い人気を誇る。同氏が名誉総裁を務める右派の自由党(PL)は、連邦議会の最大勢力だ。同氏に関する裁判を巡ってはメディアの注目度も高く、有権者も保守と革新のそれぞれの支持層がSNSなどで激論を繰り広げている。