「ピンクの潮流」が再来 左派政権が席巻する南米 格差拡大し政情不安定

昨年6月10日、ロサンゼルスで記念撮影に臨む第9回米州首脳会議に参加した首脳たち(AFP時事)

南米諸国で左派政権が連鎖的に発足し、「ピンクの潮流」とも呼ばれた2000年代初頭に似た動きが強まっている。コロナ禍とウクライナ紛争による経済危機が各国に拡大する中、公約した格差是正に「希望」を抱かせ支持を集めたが、米国との外交関係は薄まり、直面する経済問題の解決には決め手を欠き支持率が低下するなど、多くは盤石とも言えない状況だ。(サンパウロ・綾村悟)

4年前、トランプ米政権発足の保守回帰の流れが南米にも波及し、2019年1月にブラジルで「南米のトランプ」と呼ばれた保守ボルソナロ大統領が就任した。経済再生を目指して、省庁のスリム化や年金改革などを次々と断行、同性愛嫌悪などの言動には批判も起きたが、支持率も安定、再選は間違いないと言われていた。

この流れを大きく変えたのが、新型コロナウイルスの流行だ。パンデミックの中心地となった中南米では、経済が大きな打撃を受け、実に4000万人以上の貧困層が新たに生まれた。南米の経済大国ブラジルも深刻な貧困問題に直面し、廃棄食料に群がる人々の様子が報じられた際には、多くの国民が衝撃を受けた。

コロナ禍で支持を受けたのが、格差解消に向けて「富の再分配」を訴える声だ。20年以降に行われた南米の大統領選挙では、富裕層への増税、貧困層支援や資源の国営化などを強く訴えた左派系候補が次々に当選した。

20年のボリビア大統領選に始まり、21年にはペルーとチリ、22年のコロンビア、ブラジルと、全ての大統領選挙で左派候補が当選し、新たな「ピンクの潮流」を生んだのだ(共産化ではないので『ピンクの潮流』と呼ばれる)。反米左派のベネズエラとアルゼンチンも加えれば、南米は左派一色、南米10カ国(ガイアナ、スリナムを除く)のうち、7カ国が左派政権となった。

米国の影響力低下も免れない事態となっている。昨年6月に米ロサンゼルスで米州首脳会議が開催されたが、バイデン政権は、民主主義の欠如などを理由にキューバとベネズエラ、ニカラグアを招待しなかった。

これに反発したメキシコの左派のロペス・オブラドール大統領やボリビアなどの首脳が出席を見合わせ、米州機構35カ国のうち首脳が出席したのは23カ国だった。米州首脳会議は、中南米で存在感を強めている中国に対抗する意味もあったが、逆に米国の威信を落とし、中国やロシアの台頭を許しかねない状況を生んだ

ブラジルでの左派政権の誕生で、「ピンクの潮流」はまさに頂点に達しつつあるが、政情不安や支持率の低迷に悩まされている国も少なくない。

ペルーでは昨年12月7日、汚職疑惑で検察の捜査対象となっていた急進左派のカスティジョ大統領が弾劾決議を受けて罷免された。カスティジョ氏の支持層が全国規模でデモを繰り広げており、非常事態宣言が出されている。

10月に大統領選挙が予定されているアルゼンチンでは、左派のシンボル的存在で大統領選挙への出馬が予想されていたフェルナンデス副大統領が、汚職容疑で禁錮刑の判決を受けた。

一方、アマゾン熱帯雨林の保護政策を掲げるなど、国際的にも注目を集めるブラジルのルラ大統領だが、政権運営の見通しは決して明るいわけではない。ボルソナロ前大統領との決選投票は、ブラジルの選挙史上まれに見る激戦となり、国内を二分した。その分断は今も続いており、ルラ新政権は、ボルソナロ前大統領が所属する最大野党の自由党(上下院で最大勢力)を相手にしながらの舵(かじ)取りが必要とされる。

また、ボルソナロ氏の支持派は、現在もブラジル各地で抗議デモを続けている。各地の軍司令部の前では、同氏の支持者らが「(共産主義に)国を盗られた」などのスローガンを掲げながら、保守政権を取り戻す活動を行っている。

ブラジルでは、12月20日、大統領官邸で国旗を下ろす儀式の最中、ミシェル前大統領夫人が、ひざまずいて祈りながら泣き崩れる写真がSNSを通じて拡散された。自由党(PL)は、ボルソナロ氏を26年大統領選挙に擁立することを予定しており、敬虔(けいけん)な福音派教徒として知られるミシェル夫人の姿は、保守派の回帰に向けた決意を示すものとして受け止められている。

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