
【サンパウロ綾村悟】南米ブラジルで2日、現職ボルソナロ大統領の任期満了に伴う大統領選挙の投票が行われ、ボルソナロ氏とルラ元大統領による決選が決まった。決選投票は今月30日に行われる。
高等選挙裁判所によると、開票率99・9%の時点で、左派・労働党(PT)から出馬するルラ元大統領(76)の得票率が48・43%、右派・自由党(PL)のボルソナロ大統領の得票率が43・20%。投票直前に伝えられた複数の世論調査では、ルラ氏がボルソナロ氏を10ポイント以上引き離す圧倒的な優勢が伝えられていたが、実際には5ポイント差にボルソナロ氏が詰め寄った。
同時に行われた国会議員・知事選挙でもボルソナロ派の躍進が目立っており、少数政党だった与党・自由党は、下院議会選挙(定数513)でこれまでの33議席から99議席へと大幅に議席を増やした。同党は上下院共に第1党に躍り出た。ルラ氏が所属する労働党は80議席を獲得、第2党にとどまっている。
今回の大統領選は、新型コロナウイルス流行とロシアのウクライナ侵攻の影響を受けた物価高騰などによる貧困の拡大への対応が大きな焦点となった。カリスマ政治家として知られるルラ氏は、貧困対策を最重点に掲げ、富裕層への課税強化や財政支出の拡大などの公約が注目を集めた。
また、コロナ対策などで後手に回り、深刻なインフレにも悩まされたボルソナロ氏の苦戦が選挙前に予想された。実際には、政治広告を含むネット戦略で攻勢をかけたボルソナロ・与党陣営が、想定を上回る支持を広げた。ボルソナロ氏は、「うそつきどもに勝った」と事前予想を批判したほか、大統領派の著名福音派牧師は「世論調査の敗北だ」と強調している。