トップ国際中南米ブラジル大統領選 来月2日1次投票 保守派の現職か カリスマ元職か

ブラジル大統領選 来月2日1次投票 保守派の現職か カリスマ元職か

左傾化進む南米の行方左右

ブラジルのボルソナロ大統領(左)とルラ元大統領(AFP時事)

南米の大国ブラジルで、10月2日に大統領選挙の1次投票が実施される。7人が出馬しているが、実質的に右派・自由党の現職ボルソナロ大統領(67)と、左派・労働党のルラ元大統領(76)による一騎打ちとなっている。近年、中南米で左派政権が次々と誕生し、地域の左傾化が加速しているだけに、大きな注目を集める選挙となっている。(サンパウロ・綾村 悟)

 世界主要20カ国・地域(G20)のメンバーであるブラジルの中南米地域における影響力は、想像以上に大きい。名目国内総生産(GDP)が中南米33カ国全体の38%を占め、有権者数も1億5645万人に達する。投票は18歳以上の成人で義務だ。

 2003年にブラジル民主化後で初の左派政権が誕生した後、ルラ元大統領は、そのカリスマ性を発揮して国際社会での途上国の発言力強化を訴えた。反米左派のキューバやベネズエラにも理解を示し、米国が中心となって進めていた米州自由貿易圏(FTAA)構想などに反発、「ラテンアメリカの自立」を求めた。

これらは、当時の資源ブームによるブラジルの高度経済成長と、中国やロシアなど新興5カ国(BRICS)の台頭がもたらしたものだ。ルラ政権下では、最大貿易相手国も米国から中国に代わった。

現在、ブラジルは資源・食料の主要供給国としての立場を確保しているだけでなく、地球温暖化問題でカギを握るアマゾン熱帯雨林を抱え、その動向は軽視できない。

10月の大統領選挙では、支持率で首位を走るルラ元大統領と「南米のトランプ」ことボルソナロ大統領による決選投票入りの公算が大きい。決選投票は10月30日に行われる。

ブラジルの主要メディアが発表する世論調査では、ルラ氏が支持率で10ポイント以上の差をつけていることが多く、ルラ氏が優勢との報道が主流だ。

だが、米州協会・米州評議会(本部ニューヨーク)によると、インターネット上に公開されている各種世論調査の平均値は、13日時点でルラ氏の支持率41%に対して、ボルソナロ氏は37%と肉薄しており、大手メディアの報道とは乖離(かいり)している。

政策面では、有権者の6割近くが、インフレを含む経済問題や貧困、格差問題を最優先に捉えている。

財政規律を重視してきたボルソナロ氏だが、再選のアキレス腱(けん)とされてきたインフレ、特に食料・燃料価格の高騰は、中央銀行の積極的な利上げや燃料税の減税などを通じて落ち着きを見せ始めている。

ただし、ボルソナロ氏は、新型コロナウイルスへの対応や女性蔑視、性的少数者(LBGT)差別とも取られる発言が批判の的となることが多い。キリスト教福音派を支持層に持ち、同性婚やジェンダー教育には反対の立場だ。同氏の再選を望まない有権者は46%に達しており、イメージ対策が決選投票に向けたカギとなっている。

一方のルラ氏は、公約で貧困層向けの社会保障制度を拡充すると発表、財源は財政規律の見直しや富裕層への課税強化だ。ルラ氏には、高度成長時に大統領を務めたイメージがあり、ボルソナロ氏の再選を望まない有権者からの支持が集まっている。

ただし、労働党政権下では、国営石油公社をめぐるブラジル史上最悪の汚職事件が発生した。多くの与党政治家が有罪判決を受け、数千億円と言われる被害をもたらした。ルラ氏自身も汚職絡みで有罪判決を受けて服役している。

ブラジル大統領選挙は、南米の左傾化が進む中で行われる。始まりは2020年10月に行われたボリビア大統領選挙だった。反米左派モラレス元大統領の後継者として立候補したアルセ氏が当選すると、ペルー、チリ、コロンビアで次々と左派政権が誕生した。さらにブラジルでもルラ氏が当選すれば、南米9カ国が左派政権になる。

南米の左派政権の多くは穏健派だが、同地域での中国とロシアの影響力は強くなる一方だ。ブラジルで左派政権が誕生すれば、さらに米国の政治・経済面での影響力が低下することも懸念されている。

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »