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ニカラグア 独裁化進むオルテガ政権 カトリック教会まで弾圧

逮捕・自宅軟禁される司教も

ニカラグアのオルテガ大統領=2021年12月、ハバマ(AFP時事)

中米ニカラグアでは、オルテガ大統領による強権政治が激しさを増している。反大統領派の政治家やマスコミに向けられた弾圧は、カトリック教会関係者への迫害にまで発展し、逮捕・自宅軟禁を強いられる司教も出ている。1979年の「ニカラグア革命」で左派ゲリラを率いて独裁政権を倒したはずのオルテガ氏だが、中南米有数の反米左派独裁政権と化しているのが現状だ。(サンパウロ・綾村 悟)

ニカラグアは中米最大の面積を持ち、キューバにも近い中米の要衝だ。過去には、太平洋と大西洋を結ぶ運河建設をめぐってフランスや米国、近年では中国が「ニカラグア運河」の建設に興味を示してきた(中国企業による運河建設計画は2018年に頓挫)。

現大統領のオルテガ氏は、親米独裁政権を敷いていたソモサ一族に対して、左翼ゲリラ・サンディニスタ民族解放戦線(FSLN)を率いて武装蜂起し、1979年7月にニカラグア革命を成功させた“革命戦士”だ。キューバに亡命して軍事教練を受けたこともある。オルテガ氏は84年の大統領選挙で当選し、第1次オルテガ政権が始まった。

一方、ニカラグア革命直後の80年代は、「反共」を掲げた当時のレーガン米大統領が、ニカラグアの親米反政府民兵「コントラ」を支援して「第2次ニカラグア内戦(コントラ戦争)」が勃発した時期でもある。和平後の90年に国連監視下で行われた大統領選挙では、オルテガ氏が敗れ、第1次オルテガ政権が終結した経緯がある。

その後、下野したFSLNは、党分裂などで低迷した時期もあったが、中道左派的な穏健政策で人気を回復し、2006年の大統領選挙では、オルテガ氏がカトリック教会の支持を得て16年ぶりの再選を果たした。ニカラグアでは、カトリック教徒が国民の過半数を超え、政治的にも重要な位置付けにある。

第2次オルテガ政権発足当初から、キューバやベネズエラ、中露と親しくしていたオルテガ氏だが、明らかな強権政治が見られるようになったのは、18年4月に年金削減を含む社会保障制度改正に端を発した全国的な反政府デモが起きてからだ。

学生を中心としたデモに政府側は厳しい弾圧を行い、300人近くの死傷者が出る事態に発展した。デモ鎮圧後に、政府側は多くの学生リーダーを逮捕し、政治犯として国家騒乱罪を適用し、懲役刑に処した。

その後、オルテガ政権による反政府派に対する弾圧はますます厳しくなり、オルテガ氏が4選を目指した21年の大統領選挙前には、野党の主要大統領候補や反大統領派の指導者たちが、次々と国家反逆罪などの容疑で拘束された。中道右派の野党連合は、大統領選への出馬資格を剥奪された。

オルテガ政権による弾圧は、最近ではカトリック教会にまで向いている。

ニカラグアの治安当局は19日、独裁を強めるオルテガ氏に批判的な言動を行っていたマダガルパ教区のアルバレツ司教を「大衆を扇動した」として逮捕し、自宅軟禁下に置いた。今年に入ってから、すでに3人の司教・司祭が当局に逮捕されており、投獄された教会関係者も出ている。

アルバレツ司教の逮捕をめぐっては、国際人権団体が批判し、グテレス国連事務総長が事態を憂慮する声明を出している。フランシスコ・ローマ教皇も21日、ニカラグア情勢への憂慮を表明、対話による解決の必要性を訴えた。

独裁化が進むニカラグアでは、反大統領派との対話の仲介者となるはずのカトリック教会までが迫害の対象になっており、民主的な選挙も実施されない中では、オルテガ氏の強権政治を止めるすべがないのが実情だ。

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