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中南米・カリブ諸国 食料事情が急激に悪化 1400万人が飢餓の恐れ

抗議デモで政情不安も ウクライナ戦争長期化なら前例のない危機に

リオデジャネイロ市の食事支援センターで窮状を訴え、大きな反響読んだ高齢女性(左)のインタビュー(グロ簿テレビ21日放送ニュース番組より)

国連世界食糧計画(WFP)は14日、ロシアによるウクライナ侵攻などの影響で、中南米・カリブ海地域の食料事情が急激に悪化しており、対応が遅れれば1400万人が飢餓に襲われるとの試算を発表した。世界に広がる燃料・食料価格の高騰は中南米を直撃しており、反政府デモや深刻な社会不安を生み出している。(サンパウロ・綾村 悟)

今月21日、ブラジルのグロボ系列のテレビ局が流したニュース映像が社会的な反響を呼んだ。リオデジャネイロ市が今月半ばから市内各地で運営を開始した「リオデジャネイロ給食プログラム(食事支援センター)」で、利用者にインタビューした内容だ。

インタビュアーの女性がマイクを向けたのは、開所したばかりの支援センターを訪れた失業中の高齢女性だった。女性は幼い孫を抱き寄せながら、絞り出すような声で「この2年で主人と娘を続けて亡くしました。5人で暮らしていますが、仕事がなく大変です。一昨日は食料が底を尽き、家族全員が空腹で過ごしました」と涙ながらに語った。

インタビュアーも感情を抑えることができず、涙声となった。ニュースが放送されると、その様子がソーシャルメディアなどで拡散され、共感の声や支援を訴える投稿が相次いだ。女性の姿が新型コロナ禍による失業問題や長引くインフレで苦しむブラジル国民の現状を表していたからだ。

リオデジャネイロ市の関係者は、57%を超える市民が食料不安を抱えているとみている。

ブラジルは、世界有数の新型コロナパンデミックに直面し、経済が混乱する中で貧困が拡大した。コロナ禍による物流難にウクライナ問題が加わり、11・73%(過去12カ月)ものインフレに見舞われている。

ブラジル中央銀行は先月、実質金利として世界最高の12・75%を導入、インフレ抑制に努めているが、ウクライナ情勢の影響もあり、先行きは不透明だ。

WFPによると、中南米・カリブ海地域における主要食料品の価格は、ウクライナ侵攻後に27%上昇、新型コロナ流行前の2019年と比較すると111%もの上昇を記録している。

こうした中、ペルーやエクアドルでは、燃料や食料の価格高騰に伴う大規模な反政府デモが発生し、政権を揺るがしかねない事態に発展している。

ペルーでは、3月末に始まった運輸業者や農業従事者による抗議デモが全国に拡大、デモが過激化して参加者に死者が出た。左派のカスティジョ大統領は、首都リマに外出禁止令を出したが、5月には大統領辞任を求める大規模なデモに発展、野党との衝突もあり政局は混乱状態にある。

隣国のエクアドルにおいても、今月中旬から燃料価格高騰に端を発した反政府デモが長期化している。デモ隊と治安部隊の衝突で複数の死者が出ているほか、デモ隊が幹線道路を封鎖していることにより、経済的な混乱も起きている。反政府デモは、エクアドルの主要輸出品である原油生産にも深刻な影響を与えており、政府側は道路封鎖の解除を強く求めている。

デモを主導しているエクアドル先住民連盟(CONAIE) の代表とラソ政権が対話を始めたが、燃料価格の引き下げ幅などで交渉が難航している。

一方、社会不安の原因となっている燃料と食料の価格高騰は、ウクライナ戦争が続けば、さらに厳しい状況となることが予測されている。

WFPは、ウクライナ戦争が早期に終結しない場合、中南米・カリブ海地域で前例のない食料危機が訪れると警告。大規模な難民発生を防ぐためにも3億㌦(約4000億円)を超える規模の支援が必要だと訴えている。

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