
【サンパウロ綾村悟】南米コロンビアで29日、親米右派ドゥケ大統領の任期満了に伴う大統領選挙が行われ、即日開票の結果、元ゲリラの左派、ペトロ元ボゴタ市長(66)が首位に立った。有効票の過半数に達していないため、右派の実業家、ロドルフォ・エルナンデス氏(77)との決選投票が6月19日に行われる。
選管当局によると、開票率99・9%で、ペトロ氏の得票率は40・3%。エルナンデス氏は28・1%だった。ドゥケ氏の後継候補として与党の支援を受けたフェデリコ・グティエレス前メデジン市長(47)の得票率は23・8%に留(とど)まり敗退した。ドゥケ政権は、インフレや格差拡大などに反発する反政府デモが続いたことで支持を落としていた。
左派ゲリラ「M―19(4月19日運動)」出身のペトロ氏は、これまでに上院議員やボゴタ市長を経験、18年の大統領選挙では、決選投票まで進んだがドゥケ氏に惜敗した。環境政策を重視して新たな原油開発の凍結などを主張しており、富裕層への増税などを利用した貧困対策や高等教育の無料化を訴えている。自由貿易協定に反対し、左派ゲリラ・民族解放軍(ELN)との和平交渉再開も約束している。
「コロンビアのトランプ」と呼ばれるエルナンデス氏は、保守寄りの過激かつ奔放な発言で知られる。先週までは支持率1桁台の弱小候補の一人だったが、汚職撲滅を強調する姿勢への共感と、ペトロ氏の躍進を危機に感じた保守・中道層からの票が集まった。
ペトロ氏が当選すれば、コロンビア初の左派政権が誕生する。コロンビアは、米国にとって南米の中では最も重要な同盟国の一つだが、ペトロ氏が当選することになれば、南米への外交の足掛かりを失うことになりかねない。