熱を帯び始めたブラジル大統領選挙 保守と革新の一騎打ちか

ルラ氏先行、追うボルソナロ氏 注目を集める副大統領候補

10月のブラジル大統領選で激突する見通しの現職ボルソナロ大統領(左)とルラ元大統領(ともに両氏のインスタグラムから)

10月に実施されるブラジルの大統領選挙をめぐり、候補者の動きが活発になっている。主要候補の対外的な知名度や保守と革新の激突という意味でも、大きな注目を集める選挙だ。現職のボルソナロ大統領は過激な発言や新型コロナウイルス対応で評価が分かれるが、保守派からの人気は根強い。ただ、世論調査の支持率は低迷しており、貧困対策やインフレ抑制が再選に不可欠なものとなっている。(サンパウロ・綾村 悟)

サンパウロ州のジョアン・ドリア州知事が先月31日、辞任を発表した。公式な発表はないが、大統領選挙への出馬準備だ。主要各党は5月ごろには擁立候補を表明するものとみられており、各種メディアは候補予定者の動静に関するニュースで持ち切りとなっている。

こうした中、世論調査会社ダッタ・フォーリャが先月25日、大統領選挙に関する最新の世論調査結果を発表した。支持率43%で首位を走るのは、左派・労働党(PT)の党首でカリスマ政治家として知られるルラ・ダシルバ元大統領(76)だ。現職の右派・自由党(PL)のジャイル・ボルソナロ大統領(66)は、26%にとどまっている。

3位以下は、大きく差をつけられており、ルラ氏を汚職疑惑で追及したことで一躍有名になった元検察官のセルジオ・モロ氏が8%、ドリア氏は2%と低迷している。今後、両氏が中道の有権者を取り込む可能性はあるが、現状は上位2人の一騎打ちとなっている。

注目を集めているのが、副大統領候補だ。ルラ氏は、副大統領候補に中道右派のジェラルド・アルキミン元サンパウロ州知事を擁立する意向だ。左派政権の誕生を懸念する中道有権者、さらにはボルソナロ氏に反発する一部保守層を取り込むのが目的だ。

アルキミン氏は財界からの信頼も厚く、労働党と並ぶ2大政党のブラジル社会民主党(PSDB)から大統領選挙に出馬した経験もある政界の重鎮だ。ただ、同氏が副大統領になった場合、政権内で不協和音を生む可能性は否定できない。ルラ氏とアルキミン氏では本来、政治信条等が大きく違うためだ。

ルラ氏は、労働運動からの叩(たた)き上げで現在の地位を築いた。社会福祉を重視し、大統領在職時には、貧困層支援として「飢餓ゼロ」プロジェクトを打ち出した。一方のアルキミン氏は、新自由主義を重視し、ルラ氏とは長年政敵として戦ってきた。

現職のボルソナロ大統領は、軍部出身のモウラン氏を副大統領に起用したが、環境保護や新型コロナ、ウクライナ危機への対応などをめぐって意見が対立、政権運営に支障を来している。

ボルソナロ氏は、今回の副大統領候補には、現国防大臣で陸軍大将でもあるブラガ・ネット氏を指名する方針だ。ネット氏は、過激な発言を繰り返すボルソナロ氏に忠実な閣僚として知られており、保守派からの信頼も厚い。

各種世論調査はルラ氏優勢だが、労働党政権は、ブラジル史上最悪とも言われた石油公社をめぐる汚職事件などの負の遺産も残した。ルラ氏自身も、中南米の反米左派や独裁政権を擁護する姿勢などが問題視されている。

ボルソナロ氏は、勢力伸長が著しいキリスト教福音派からの支持が望めるが、世論調査の不支持率は高い。ただ、米大統領選挙で事前のメディアや世論調査の予想と実際の結果が大きく食い違ったように、ボルソナロ氏に関しても、一部ネットメディアの世論調査では「ルラ氏と互角」との数字も出ている。

一方、コロナ禍による貧困拡大や燃料・食料品の高騰など、多くの有権者が重視するのは経済問題だ。ウクライナ危機を受けて、資源輸出国のブラジルには海外投資が流れ込んでいる。低所得者層向けの新たな現金給付策も含めて、貧困・インフレ対策がボルソナロ氏が再選に向けて抱える当面の課題だ。

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