憲法裁が「恩赦無効」覆す
南米ペルーからの報道によると、同国の憲法裁判所は17日、人権侵害の罪で収監されているアルベルト・フジモリ元大統領(83)について、2018年10月の恩赦無効判決を覆す決定を下した。フジモリ氏は数日内にも3年ぶりに釈放される見通しだという。
フジモリ氏は、在任中の左翼活動家に対する人権侵害事件に関与していたとして、2010年に禁錮25年が確定、首都リマ市郊外の警察施設に収監された。
その後、17年12月に当時のクチンスキ大統領が健康上の理由で恩赦を与えたが、翌年10月に裁判所が無効と判断、19年1月に再収監されていた。恩赦の判断が覆されるのは極めて異例。
近年のフジモリ氏は、健康状態の悪化で入退院を繰り返しており、昨年10月には心臓カテーテルの手術を受けた。こうした中、最期は家族と共に過ごすべきだとして、人道上の判断から恩赦を与えるべきとの意見が出ていた。
一方、憲法裁判所の決定には、左派カスティジョ政権内や反フジモリ派から反発の声が上がっている。人権侵害事件の被害者家族らは同日、恩赦の取り消しを求めて、米州人権裁判所に不服を申し立てた。フジモリ氏は1990年にペルー初の日系大統領に就任。ハイパーインフレを抑えて経済を立て直し、極左ゲリラが席巻していた国内治安を改善した。ただ、フジモリ氏の政治手法を強権的だと批判する勢力もあり、現在も評価は分かれている。
(サンパウロ・綾村悟)