旱魃・火災で消失進む 世界最大の湿原 ブラジル・パンタナル

気候変動対策で保全が急務

世界最大の湿地帯として知られる南米ブラジルのパンタナル大湿原。二酸化炭素を吸収するだけでなく、地域の気候安定化にも寄与しているが、近年の異常気象と森林火災により、膨大な面積の森林を失っている。パンタナルは、国際的に重要な湿地を保全する「ラムサール条約」のリストにも入っており、その貴重な生態系も合わせた保護が急がれている。(サンパウロ・綾村 悟)

緑と水に恵まれたパンタナル湿原(2013年11月、綾村悟撮影)

世界的に気候変動対策が急がれる中、沼地や泥炭地、氾濫原などの「湿地」が注目を集めている。土地面積に比べて、地球温暖化ガスの二酸化炭素やメタンガスを吸収する量が圧倒的に大きいためだ。

湿地の中でも、特に泥炭地の二酸化炭素吸収量は多く、地球表面の3%にすぎない泥炭地が、世界中の森林を合わせた量よりもはるかに多い二酸化炭素を吸収する。北海道の釧路湿原などもその一つだ。

ただし、急速な開発や汚染などにより、1970年からの約半世紀で、世界の湿地帯の実に35%が消失した。世界170カ国が加盟するラムサール条約(1971年締結)は、もともとは湿地の健全な利用と水鳥の保護を主眼としたものだった。

しかし、地球温暖化問題がクローズアップされる中、条約加盟国では、湿地の回復に向けた働き掛けも活発に議論されるようになっている。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、温暖化対策のために2030年までに消失した湿地の半分を回復する必要があるとしている。ブラジルは、アマゾン熱帯雨林を国内に持つことから、温暖化問題で最も注目を集める国の一つだ。

開館を間近に控えたパンタナル水族館(ブラジル・マトグロソドスル州政府提供)

加えて、国内に27のラムサール指定湿地を抱えており、中西部に位置するパンタナルは世界最大の湿原だ。ブラジルがラムサール条約に登録する湿地の総面積は2680万ヘクタール、北海道の全面積の3倍に相当する。

また、パンタナルは、世界有数の生態系を持ち、世界自然遺産にも指定されている。「動植物の楽園」と呼ばれるほど、数千種の動植物相に恵まれており、絶滅危惧種とされる動物も少なくない。気候変動抑制の観点だけでなく、自然遺産を守るためにもパンタナルの保全・保護は欠かせない。

そのパンタナルは近年、農地開発と旱魃(かんばつ)、森林火災により、深刻なダメージを受けている。

特に、19年と20年にパンタナル地域を襲った歴史的な旱魃は、同地で大規模な砂嵐が発生するほどの森林火災を引き起こした。特に20年に発生した森林火災は、パンタナル全域の3分の1に相当する3万9000平方㌔㍍を焼き尽くし、森林と生態系の再生に数十年が必要とされるほどの被害を与えた。

一方、森林火災の原因に関しては、衛星からの画像などを解析したブラジルや米国の専門家からは、「森林火災の多くのケースは、人為的に(森林を消失させることが目的で)引き起こされたものだ」との指摘があり、監視強化が求められている。

現在、雨期を迎えたパンタナルでは、2年続いた旱魃が終わり、連日のように雨が降っている。ただし、マトグロソドスル(MS)州政府の環境局関係者は、歴史的な異常乾燥と森林火災がもたらしたダメージを回復するには現在の降雨量は十分ではないと指摘、長期的な保全計画が欠かせないと主張する。

こうした中、パンタナルの南側に位置するMS州の州都カンポグランデ市(人口約80万人)で来月下旬、「パンタナル水族館」が開館する。

湿地帯の生態系を中心に展示する水族館は世界初の試みとなっている。また、世界的にも貴重な生態系の研究と研究内容の公開を目的とした機能も付加されることになっており、国内外の研究者や機関が参加するパンタナルの自然保護に向けた取り組みが期待されている。

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