トップ国際アジア・オセアニアインドネシア産ニッケル“一本足打法”のリスク 中国、EV覇権狙い囲い込み

インドネシア産ニッケル“一本足打法”のリスク 中国、EV覇権狙い囲い込み

 中国によってほぼ支配されているレアアース(希土類)と同様のことが、ニッケルでも起きようとしている。レアアースは半導体製造に使われるが、ニッケルは電気自動車(EV)用電池の原材料となる。どちらも大きな世界需要が見込まれる戦略物資だ。中国はレアアースをミャンマーから調達する一方、ニッケルは世界最大の埋蔵量を誇るインドネシアで採掘から加工、EV用電池製造に至る一貫工程をつくり出している。(池永達夫)

中国企業が投資するインドネシアのモロワリ工業団地(同団地HPから)
中国企業が投資するインドネシアのモロワリ工業団地(同団地HPから)

 インドネシアは、2020年からニッケル鉱石輸出を禁止している。国内加工を義務付けたことで加工工場への投資が急増し、インドネシア経済を押し上げる要因ともなった。45年までの高所得国入りをナショナルゴールに設定しているインドネシアとすれば、ニッケル産業の振興は朗報ではあるものの、素直に喜べない事情もある。

 ニッケル加工工場建設に乗り出したのは、ほとんどが中国企業だったからだ。

 安全保障専門の米シンクタンク「高等国防研究センター(C4ADS)」は昨年2月、インドネシアのニッケル製錬能力の4分の3を中国が支配しており、サプライチェーン(供給網)リスクが高まっていると懸念を表明した。

 C4ADSのリポートによると、インドネシアの精錬能力800万トンは33社に分散されているものの、所有権まで見ていくと重複する株主が散見され、総括すると中国企業が精錬能力の4分の3を掌握しているという。

 どんなビジネスでも一国だけの大口顧客に依存する“一本足打法”は、いずれ自分の首を絞めることになりかねない。大国同士の軋轢(あつれき)や競争に巻き込まれるリスクが存在するからだ。

 中国がこれまで300億ドルを投資したインドネシア中部スラウェシ州の「モロワリ工業団地」では、採掘から加工、EV用電池製造に至るまでの一貫工程が行えるよう整備されている。

 インドネシアは世界最大のニッケル採掘・加工国に急成長したものの、生産力急増による供給過剰でニッケルは約半値まで下落。隣国オーストラリアは低価格に耐えきれず工場の一時停止に追い込まれた経緯がある。インドネシアとすれば競争相手を市場から振り落としたと、もろ手を挙げて喜ぶわけにはいかない地政学的状況がある。中国陣営に組み込まれたと欧米など西側諸国から見られれば、将来の市場を失いかねないからだ。

 インドネシアのニッケル産業に投資している中国の動機は、利益をたたき出せばいいということだけではない。21世紀の車市場でEVを主役に押し上げることでEV覇権を握りたい中国は、EVのコア部分となる電池の主要資源ニッケルを押さえ込み、安価で安定した供給網をつくり上げようとの戦略的意図がある。

 その意味では中国だけでなく、水面下で始まっている日本や欧米諸国の投資がどれだけ実を結ぶか注目される。

 なお、インドネシア政府は中国の風下に立つことを避けるため、ニッケル工場の操業開始後の株式売却義務化や収益の国内留保義務を課すことでバランスを取ろうとしている。

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