トップ国際アジア・オセアニア中国、世界覇権構築へ布石 カンボジアと協力深化

中国、世界覇権構築へ布石 カンボジアと協力深化

 中国の王毅共産党政治局員兼外相と董軍国防相は22日、カンボジアの首都プノンペンを訪問した。中国とすれば5月に北京で予定される米中首脳会談を前に、近隣の東南アジア諸国連合(ASEAN)を固めておきたい意向がある。同時に世界覇権構築に向けて走る100年マラソンに備えた布石といった遠謀も秘めている。(池永達夫)

カンボジア南西部のリアム海軍基地に寄港した海上自衛隊の掃海母艦「ぶんご」=2025年4月19日(代表撮影・時事)
カンボジア南西部のリアム海軍基地に寄港した海上自衛隊の掃海母艦「ぶんご」=2025年4月19日(代表撮影・時事)

 王、董両氏は、カンボジアのプラック・ソコン外相、ティア・セイハ国防相と初の外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)に臨み、自由貿易維持や防衛協力を深化させることで一致した。王氏はその足でタイ、ミャンマーも訪問した。

 中国が「南進」を本格化させたのは1990年代初期のことだ。沿海地域とは対照的に経済発展から取り残された雲南省など西南地区の開発を目指した当時の李鵬首相は、「雲南を南に向かって開き南進せよ」との国家戦略を発令した。

【関連記事】埠頭363メートルは中国空母用?カンボジア海軍基地リアム フリゲート艦2隻が寄港 中国南進 揺れるASEAN(1)

 あれから30余年、中国のASEAN進出は、習近平政権の世界戦略「一帯一路」に吸収される形で大きく動きだしている。世界の工場として過剰な生産能力を持つ中国にとって貴重な輸出市場であると同時に、中国の裏庭としての地政学的ポジションにあるASEANは安全保障上の要衝でもある。

 とりわけ中国にとって欠かせない国がカンボジアだ。11カ国が加盟するASEANは、多数決ではなく全会一致制だ。1カ国でも反対すると、その問題は棚上げになる。南シナ海で法的拘束力を持つ「行動規範」の策定問題などでカンボジアは、中国の意をくむ形で動いてきた経緯がある。

 そして今、中国は、タイ湾に面し、自国が全面出資して改修したカンボジアのリアム海軍基地を、アフリカ東部ジブチの基地に次ぐ人民解放軍の新たな海外拠点にしようとしている。昨春に完成したリアム基地の埠頭(ふとう)はジブチ同様の長さを誇る363メートルだ。それまでは100メートルにも満たない小さな埠頭でしかなかったが、中国の浚渫(しゅんせつ)船も稼働し、喫水の深い軍艦も着岸できる深海港になった。小規模の海軍力しか持っていないカンボジア海軍には過ぎた施設で、狙いは中国空母の停泊とされる。

 各国海軍のテキストとなっているマハンの「海上権力史論」で言及される「シーパワー」には、海軍力だけでなく港湾施設も入っている。海洋進出強化を図る中国にとってリアム基地は、南シナ海の安全保障をにらんだ布石だ。

 また、シアヌークビルから北西に50キロ地点には2024年、中国が建設したダラサコール国際空港が開港した。地元の人口は10万人にすぎないものの、滑走路はプノンペン国際空港をもしのぐ3200メートルで、大型の軍用機の離着陸も可能だ。懸念されるのは、中国による同空港の軍事転用だ。

 王氏は2プラス2で、「世界で加速度的に進む100年来の変局に直面し、両国はこれまで以上に緊密な連帯を必要としている」と述べた。

 欧米など西側諸国にくさびを打ち込み、世界の覇権構造を根底から変えたいと思っているのが中国だ。100年マラソンを走る中国が目指しているのは、世界一の経済軍事大国にのし上がり、建国100年を迎える49年までに世界の覇権国への切符を手にすることだ。そうした赤い野心を内に秘める中国が、ASEANという裏庭で打ち始めている布石の意味をしっかり見定める必要がある。

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