
中国では経済よりも政治を優先した共産党の政策により、経済不況が続いている。失業する若者は多く、35歳を過ぎると再就職が特に困難になるという。将来への不安などから子供を持つことに対して消極的な若者が目立つようになった。政府は激減する出生数による労働人口の減少に危機感を抱き、避妊具に課税するなど対応に躍起だ。(宮沢玲衣)
中国では経済の低迷からリストラが横行している。旧正月を祝う春節の前後にボーナスが支給されるため、そこでリストラを敢行する経営者や転職活動を行う人は多い。企業に残った従業員は少ない人数で仕事を回さなければならないため、仕事量は膨大となり、残業は増える。浙江省杭州市に住む28歳の女性は仕事量が年々増える一方で、給与はほとんど増加しない。自身の貯金目標のため今年も仕事を継続するつもりだったが休み明けに失業した。「残っても際限なく抑圧されるだけだ」と悔しそうに語った。
中国国家統計局によると、2月の都市部の失業率は5・3%だったが、これは実際の数字とは懸け離れているといわれている。失業者がその場しのぎの日雇いや非正規雇用の仕事を1週間のうちに1日行っただけでも失業状態とは見なされないなど、中国で失業者と認められるための条件は厳しい。
再就職活動を巡っても中国の転職市場は日本の状況よりもはるかに難しく社会問題化している。多くの企業が、長時間労働へ不満を示さず、低報酬でもよく働き、仕事を覚えるのが早い若い従業員を求めている。「35歳の壁」「35歳の呪縛」などとささやかれるほどで、35歳を境に再就職や転職が極端に困難になったり、解雇の対象になりやすくなる。
行政側は「年齢への差別をなくす」を掲げ、35歳以上でも国家公務員試験を受験できるようにし、企業に対しても年齢による差別や排斥をなくすように求めている。それでも、人口の多い中国で年齢を重ねるごとに再就職が厳しくなっている現実に変化はない。若年層が集まりやすいドリンクスタンドの仕事では、体力が必要との理由で18~26歳の若者にのみ求人を限定し、27歳の女性が年齢を理由に求職を断られた事例が今月、波紋を呼んだ。
若い世代からは経済不安、激しい競争、将来への不安から、食べていくだけで精いっぱいという声が日に日に大きくなっている。ここ10年で中国の出生数は半減し、2025年は共産党が政権を握った1949年以降最低を記録した。
長年の一人っ子政策によって、きょうだいがいる家庭が自分や周囲におらず、子供は1人で十分という考え方が浸透したことも出生数の減少につながっている。意識変化も顕著で、年配の世代では「子供が1人増えるのは、箸を1膳増やすようなものだ」と子供を持つことに対して非常に楽観的だった。そのため、子供を望まない若者を「無責任」や「要求が高過ぎる」と非難している。一方で若い世代は、十分な教育や良い環境を用意できないのであれば、混乱する社会に子供を誕生させないことこそ子供に対する責任だという考え方に変化している。
習近平国家主席は若者へ結婚、出産、家庭に対する価値観を積極的に指導するよう求めている。政府は一人っ子政策を転換し、2016年から2人目、21年から3人目の出産を認めた。3歳までの子供に年間3600元(約8万円)を支給するなどし、結婚と出産を奨励している。ただ、精神的な自由を重要視し始めた若者たちには魅力的な選択肢ではなくなっている。
中国政府は労働人口減少への警戒感から、今年からコンドームや避妊用のピル、器具などに新たに13%の課税を行うようになった。若い女性に昨年ごろから、家族計画や生理周期などを聞く電話が行政側からかかってくるようにもなったといわれ、国を挙げての「ハラスメント」が横行している。
過去には、避妊させるなど社会的圧力で子供を産ませないようにすることは成功した。しかし、子供を持つことがある種の「負担」だとも捉えられる時代に、今度は多く産ませることができるのか、疑問が残る。






