トップ国際アジア・オセアニアバングラデシュ、新政権発足 イスラム協会含む3党時代へ

バングラデシュ、新政権発足 イスラム協会含む3党時代へ

1月17日、バングラデシュの首都ダッカで首相就任宣誓を行うタリク・ラーマン氏(ロイター時事)
1月17日、バングラデシュの首都ダッカで首相就任宣誓を行うタリク・ラーマン氏(ロイター時事)

 2月中旬のバングラデシュ総選挙は、主要政党のバングラデシュ民族主義党(BNP)が3分の2を超す議席を得て大勝し、タリク・ラーマン党首が新首相に就任した。ラーマン新政権は、インフレの抑止と今秋に予定される後発発展途上国(LDC)卒業後の輸出競争力の維持といった経済問題の他、国内の政治的分断の修復や中印の間で揺さぶられる外交課題など待ったなしだ。(池永達夫)

 300議席を争った総選挙の結果はBNPが209議席、イスラム政党のイスラム協会(JI)が68議席、学生政党の国民市民党(NCP)が6議席だった。

 ハシナ政権を倒した2024年8月の若者主体の反政府デモでは、Z世代と呼ばれる学生たちの活躍ぶりが顕著だった。そうした彼らが立ち上げたNCPは、選挙でJIと組んだことへの失望や経験不足への懸念から議席は1桁台にとどまった。

 今回の総選挙で特筆すべき事柄は、イスラム政党のJIが野党第一党に浮上したことだ。17年間、政権を維持してきたアワミ連盟(AL)のハシナ政権下では、世俗主義を基軸として宗教政党の影響力を削いできた経緯がある。そのALがデモ対応で1400人の死者を出したとして、総選挙参加を封じられたことで宗教政党が息を吹き返した格好だ。JIは急進的なイスラム政党のイメージを緩和するため、福祉活動を充実させるとともに、戸別訪問など草の根型どぶ板選挙を実施、これが功を奏した。JIは既に次の総選挙をゴールに設定し、街頭活動を中心に据えた政党活動に動きだしている。

 1971年にパキスタンから分離独立したバングラは、軍事政権期を乗り越えて91年に民主化。2大政党のBNPとALが政権交代を繰り返してきた経緯があるが、今回の総選挙でAL支持者の約3割がBNP支持に回ったとされるものの、ALの再浮上は時間の問題だ。結局、これまでの2大政党からJIを含めた3大政党の時代へと変わることになるもようだ。

 さてラーマン新政権に求められる重要課題は、まずはインフレの抑止だ。今年1月のインフレ率は8・5%と賃金上昇率を超えており国民の生活を直撃している。

 また11月には国連でLDC卒業が予定される中、繊維産業を主体とした輸出の国際競争力をどう維持していくのかが問われてくる。バングラはこれまでLDCに付与される特別特恵制度の恩恵を受け、先進国へ輸出する際の関税は原則無税だった。卒業すれば、3年間の移行期間があるとはいえ、この特別待遇を失う。一つの対応策は自由貿易協定(FTA)の締結だ。早速、わが国は2月、バングラで初となるFTAを結んだ。

 さらに新政権に問われる政治課題は、国内融和をどう図るかだ。ALのハシナ政権時代には露骨な野党弾圧や言論統制など強権統治が進んだ。その意趣返しをBNPがやれば、分断の溝は深まるばかりで、治安悪化は外資を遠ざけ経済復興の足掛かりをも失いかねない。そうなれば政治的野心は満たされても、犠牲になるのは国民だ。往年のBNP政権も、AL幹部や支持者を弾圧してきた経緯があるだけに、ラーマン首相は分断修復へ向け舵を切り、国家をまとめ上げていく覚悟が問われる。

 そしてバランス外交への期待度も高い。バングラはパキスタンから独立する際、インドの支援を受けた歴史的経緯もあってインドとの関係は深いものがある。だが2024年の政変でインドに亡命したハシナ元首相の引き渡しを求めるバングラ側とインドとの確執は深まっている。その間隙を縫うように中国がバングラへの影響力増大に動きだしている。

 そうした中印の綱引きの渦中でバングラが、どう手綱をさばくのか注視される。それは「自由で開かれたインド太平洋戦略」にも関係してくるだけに、わが国も傍観するわけにはいかない。

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