
中国の「抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年」軍事パレードに先立ち、天津で開催された上海協力機構(SCO)首脳会議には、過去最大規模となる20カ国以上の首脳が参加した。中国が、米主導の国際秩序に対抗する中国中心の枠組みを誇示する一方で、ロシアのプレゼンスがさらに低下したことを示す結果となった。(繁田善成)
SCOの前身の上海ファイブ(中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン)は1996年に設立された当時、アジアにおける「ロシアとそのパートナー」のクラブと位置付けられていた。中央アジア諸国に進出しつつある中国を取り込むことで、中国の動きを牽制(けんせい)しようとする枠組みでもあった。
それが今では、SCOは中国を中心とする組織となり、中国の影響力拡大の手段として機能していることに疑問を抱く者はいない。この5年間で、中国はついに中央アジア諸国を「ロシアの支配圏」から離脱させ「中国の影響圏」に導き出した。一方のロシアは主要プレーヤーから「一参加国」に成り下がった。
SCOの正式加盟国は10カ国で、それにオブザーバー2カ国が加わる。それが今回の首脳会議には、過去最大規模となる23人の首脳に加え、国連や東南アジア諸国連合(ASEAN)を含む8国際機関の代表が参加した。
数だけではない。アゼルバイジャンとアルメニア、インドとパキスタン、トルコとイランといった、相互に領有権を主張し対立関係にある国々の首脳が天津に集まったことは、SCOの重みを内外に示す形となった。
米国は海上物流の「要衝」と見なされる国々、すなわちパナマ(パナマ運河)、カナダとデンマーク(北極圏)、エジプト(スエズ運河)、マレーシアとインドネシア(南シナ海とマラッカ海峡)などに対し、一部を除いて圧力政策を進めてきた。
米国は海上物流を支配することで、中国を不利な立場に追い込もうとしているが、今回のSCO首脳会議にはパナマ、エジプト、マレーシア、インドネシアが参加した。
SCO首脳会議に参加した国々は、程度の差はあれ「時代遅れの欧州中心主義と欧州大西洋モデル」(ロシアのプーチン大統領)という共通認識と、トランプ関税など米国の「圧力政策」への対抗という観点で結び付いた国々だ。
これらを背景に、中国は自国の利益を体現する勢力圏を形成しつつある。それを裏付けるように、サミットで取り上げられた優先議題――政治、安全保障、経済、人道支援のうち、政治が最優先事項に挙げられた。
これは、SCOが最終的に政治機構へと変貌することを示唆しており、中国が「世界の第2極」となることを加速するだろう。
その流れの上で抗日戦争勝利80年の記念パレードは重要な位置を占める。「西側世界」を結束させてきた「反ヒトラー連合」という認識・枠組みを拡大し、「戦勝国」という枠組みにすることを試みているのだ。
これにより中国は自らを世界史の一部と位置付け、イデオロギー分野でも世界の第2極にふさわしい“正統性”を構築しようとしているのだ。
一方、かつてSCOの“盟主”として振る舞ったロシアの凋落(ちょうらく)は著しい。ロシア経済はますます中国経済への依存を強めている。
ロシアはベラルーシのSCO加盟に反対してきたが、中国の強い意向で2024年に正式加盟国となった。黒海沿岸、カフカス、中央アジアでもロシアはその影響力を急速に失いつつある。
プーチン氏は、ウクライナ侵攻に関してSCOから政治的な支持を得ることを期待していたが、直接的な承認は得られず、首脳会議後の宣言では一言も触れられなかった。
中国にとって、ロシアの政治的影響力を弱めることは国益そのものだ。黒海地域での影響力を拡大しつつあるトルコにとっても同様だ。インドとロシアは良好な関係にあるが、ロシアを積極的に支持する理由はない。
実際、ロシアへの積極的な支持を示すことは、ほとんどの首脳会議参加者にとってマイナスでしかない。SCOを背景にロシアの正当性を示し、対米交渉での立場を強化し、米国にウクライナ和平案を受け入れさせるという目論見(もくろみ)は、実現せずに終わった






