トップ国際アジア・オセアニア防衛強化で同盟国と連携加速 フィリピン 南シナ海・台湾情勢見据え

防衛強化で同盟国と連携加速 フィリピン 南シナ海・台湾情勢見据え

6月14日、南シナ海海上で、海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」に着艦を試みるフィリピン海軍のヘリコプター(時事)
6月14日、南シナ海海上で、海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」に着艦を試みるフィリピン海軍のヘリコプター(時事)

自衛隊が米比演習に正式参加

中国の南シナ海進出が激しさを増す中、フィリピン政府は防衛体制を強化するとともに、日本や米国など同盟国との軍事連携を一段と深めている。国軍の近代化やミサイル配備、実戦的な演習などを通じて、南シナ海や台湾有事に備えた抑止力の構築を本格化させている。(マニラ福島純一)

4月末に南シナ海で行われた、米比豪3カ国による合同海空パトロールに対し、中国は「挑発的で地域の安定を脅かす行為だ」と強く反発しフィリピンを強く非難。さらに中国海警もスカボロー礁(中国名・黄岩島)でフィリピンの補給船や漁船を追い回し、再び放水銃を使用するなど妨害行動を続けている。

さらに6月末には、中国政府が対中関連法案を主導してきたトレンティーノ元上院議員を「反中的な政治家」と名指しし、中国本土・香港・マカオへの入境を禁止する制裁を科した。これに対し上院からは「主権を守る立法がなぜ非難されるのか」と反発の声が上がり、中国大使の召喚を求める動きも出ている。

こうした対立が激化する中、フィリピン国軍は防衛装備の近代化を加速。空軍では韓国のFA50戦闘機の追加調達に加え、米F16や日本のF2導入も検討。米軍の中距離ミサイルシステム「タイフォン」はルソン島北部に“無期限”で駐留し、2基目の配備も協議中で、一時的な演習から恒常的配備へと移行しつつある。

さらに6月末には、米国が旧スービック海軍基地に弾薬の生産・貯蔵施設を設ける構想を提示。テオドロ国防相は「雇用や技術移転の面でも有益」とし、正式な提案があれば前向きに検討する姿勢を示した。インド太平洋地域の弾薬供給力を強化するこの構想は、安全保障と産業支援の両面で注目されている。

日本との協力も大きく進展している。6月には日比間の「相互アクセス協定(RAA)」が発効し、自衛隊とフィリピン軍が相互に基地を利用可能となった。これは日本が東南アジア諸国と結んだ初の協定で、地域の安全保障再編を象徴する。さらに両国は物品役務相互提供協定(ACSA)や情報保護協定の締結に向けた協議も進められている。

さらにフィリピンは、フランスとも訪問部隊地位協定(VFA)の交渉を開始した。欧州連合(EU)諸国としては初のケースで、欧州との連携強化に向けた大きな一歩となった。すでに仏空母「シャルル・ドゴール」のフィリピン寄港や合同訓練も行われるなど、フランスは「自由で開かれたインド太平洋」に積極的な関与を示している。

こうした連携強化により、6月には日米比の沿岸警備隊による大規模な合同演習が鹿児島沖で実現。4月には米比合同軍事演習「バリカタン」に日本の自衛隊が初の装備付きで正式参加し、島嶼(とうしょ)防衛を想定した訓練を展開した。

マルコス大統領は「主権に対するいかなる無礼も決して容認しない」と強調し、装備の近代化と多国間連携の両面で、中国への抑止力構築を加速させている。同盟国との連携を深めながらも、致命的な衝突を避ける外交的舵(かじ)取りも課題となる。

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