トップ国際アジア・オセアニアマルコス政権、事実上の敗北 比中間選挙 ドゥテルテ派、予想上回る議席確保

マルコス政権、事実上の敗北 比中間選挙 ドゥテルテ派、予想上回る議席確保

12日、フィリピンの北イロコス州バタックで中間選挙の投票を終えたマルコス大統領(左から2人目)(AFP時事)
5月に行われたフィリピンの中間選挙は、マルコス大統領にとって政治的な「警告灯」となった。上院選では政権与党の候補者が苦戦し、公認候補11人中わずか5人しか当選できなかった。一方で、ドゥテルテ派は予想を上回る善戦を見せ、今後のサラ・ドゥテルテ副大統領の弾劾裁判や、次期大統領選の構図にも影響を及ぼしつつある。(マニラ福島純一)

上院選では、ドゥテルテ前大統領の側近ボン・ゴー議員がトップ当選を果たし、前政権で「麻薬撲滅戦争」の指揮官だった元国家警察長官のロナルド・デラロサ議員が3位で当選。また、事前予測で圏外とされたマルコレタ・ロダンテ下院議員が6位に入り、マルコス派から離脱しサラ副大統領支持に回ったカミーユ・ビリヤール氏や、マルコス大統領の姉でありながら政権与党と距離を置いたアイミー・マルコス氏も当選圏内に滑り込んだ。さらに、国際刑事裁判所(ICC)により逮捕・拘束中のドゥテルテ前大統領が、地元ダバオ市長選で圧勝したことは、ドゥテルテ家の地方での圧倒的な支持を裏付けた。

これに対し政権与党側は、有名人候補の元俳優ボン・レビリア議員や、ボクシング王者マニー・パッキャオ氏らが次々と落選。国民の「マルコス離れ」が鮮明になった。

今回の選挙は単なる与野党の争いにとどまらず、インフレや汚職、インフラの停滞などに対する「政権への審判」の意味合いを持っていた。選挙後、マルコス大統領は全閣僚に辞表提出を求めるなど、内閣改造に踏み切ったが、これは政権の求心力低下を象徴する動きと受け止められている。

最新の世論調査では、マルコス大統領の信頼率はわずか32%、不信率は42%に達したのに対し、ドゥテルテ前大統領の信頼率は63%の高水準を維持。サラ副大統領も50%の信頼を得ており、弾劾に反対する国民も過半数に上っている。ドゥテルテ前大統領のICCへの引き渡しにも58%が反対しており、特に地元ミンダナオでは反対が96%に達した。

こうした状況は、ドゥテルテ派の再台頭とマルコス政権の「レームダック(死に体)化」を象徴している。政権内部にも動揺が広がり、統治能力の低下を懸念する声も出始めている。

サラ副大統領への弾劾を巡っても、選挙後の情勢変化により反対票に回る議員が増えるとの見方が強まっている。マルコス大統領自身も選挙後、ドゥテルテ派との和解に言及するなど、弾劾から距離を取る姿勢を見せており、政権の後退を印象付けた。仮に「副大統領追い落とし」に失敗すれば、逆にドゥテルテ派の勢いを強めることになりかねない。エスクデロ上院議長が弾劾裁判の開始を延期するなど、中間選挙後の情勢変化を受けて、弾劾を巡る空気も徐々に変わりつつある印象だ。

2028年の大統領選を見据えると、サラ副大統領が有力候補として浮上する可能性が依然として高い。これに対し、マルコス陣営は後継候補を立てられるかも不透明で、与党内の分裂すら懸念されている。

マルコス大統領の息子であるサンドロ下院議員の名も挙がるが、経験・実績・人気のすべてで課題が多い。さらに、今回の選挙結果から、ドゥテルテ派にもマルコス派にも属さない、第三勢力の台頭も視野に入り、三つどもえの混戦となる可能性も出てきた。

求心力を失いつつあるマルコス政権にとっては、政権維持だけでなく、党内の結束と国民の信頼をどう取り戻すかが、今後最大の課題となる。

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