トップ国際アジア・オセアニアカンボジア・ラオス「一本足打法」 中国の経済低迷 米中対立受け

カンボジア・ラオス「一本足打法」 中国の経済低迷 米中対立受け

日本・欧州に投資呼び掛け

カンボジアのフン・セン前首相(左)と息子のフン・マネット首相=9月25日、プノンペン(フン・セン氏のフェイスブックより・時事)
カンボジアのフン・セン前首相(左)と息子のフン・マネット首相=9月25日、プノンペン(フン・セン氏のフェイスブックより・時事)
東南アジア諸国連合(ASEAN)の中で、「中国の代理人」とされてきたのがカンボジアとラオスだ。圧倒的な中国資本の投下で、両国は経済発展の足掛かりを得た。だが近年の中国の経済低迷と米中対立のあおりを受け、中国一辺倒の「一本足打法」に変化の兆しが出てきた。(池永達夫)

非同盟主義を通してきた中国は、国際社会の中で同盟関係を結ばない。中国はその代わり、他国とパートナーシップ協定を結ぶ。その最上位にあるのが「運命共同体協定」だ。中国は2010年代後半、カンボジアおよびラオスと運命共同体協定を締結した。

両国に対する中国資本の投下も顕著だ。

カンボジアへの昨年度の直接投資では、総額45億5000万㌦のうち中国が75%を占める。ラオスに対しても建設費6000億㌦とされるラオス縦断の高速鉄道や高速道路の建設など、インフラ整備に巨額の中国資本が投下されてきた。

またカンボジアへは靴や衣料の縫製工場など中国の製造業が、大挙して押し寄せたりもした。中国は第1次トランプ政権時代に課せられた高関税を潜り抜けるため、カンボジアに製造業を移し、欧米などへの輸出基地とした経緯がある。中国企業は、カンボジアの廉価な賃金で経営効率を上げることもできた。

だが、バイデン政権時代の米国はこれを中国による迂回(うかい)輸出と判断し、カンボジアに進出する中国企業に制裁を科した。

これによりカンボジアから米国への輸出に暗雲が漂い始めた。それでも昨年のカンボジア製品の輸出先は、全体の38%を米国が占めた。

しかし、カンボジアの対米輸出製品が、第2次トランプ政権の高関税政策のターゲットになった場合、中国資本のカンボジア製造業は一気に土砂降りの雨にさらされることになる。

こうした懸念を抱くようになったカンボジア政府は、往年の中国一本足打法から脱却し、中国以外の国々への投資呼び込みに余念がない。無論、不動産バブル破裂に端を発した中国経済の低迷もこれに拍車を掛ける。

カンボジア政府は昨年11月、スン・チャントール副首相をバンコクに送り込み、タイ企業だけでなく東南アジア進出の日系企業にも投資を呼び掛けた。また、今年3月には欧州連合(EU)投資使節団をカンボジアのシアヌークビルに招待し経済協力拡大に向けた地ならしを行っている。カンボジアと戦略的パートナーシップを締結した韓国は昨年、経済使節団をプノンペンに派遣している。

カンボジアの対中傾斜を加速させ、米国と距離を置いてきたのはフン・セン前首相だった。そのフン・セン氏の長男であるフン・マネット氏が首相に就任して今夏で2年を迎える。フン・マネット首相は米国留学経験もある国際派だ。その国際派色が生かされることになるのか、注目される。

また、雄大な国際河川メコンと豊かな自然環境に恵まれた山岳国家ラオスは外国人バックパッカーの聖地になりつつある。その観光産業を底上げし、中国だけでなく隣国タイやベトナム、さらに欧米や日本などとの経済関係拡大に道筋を付けることができるのかも焦点の一つだ。

行き過ぎた振り子は、元に戻ろうとする。中国の衛星国家的様相さえ見せていたカンボジアやラオスが、これからどう国際的なバランスを取るのか関心の的となるが、親日国家でもある両国に寄り添い、内外共の支援を惜しむことなく、指針も同時に発信できるわが国でありたい。

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