トップ国際アジア・オセアニアフィリピン、中国の諜報活動へ懸念 トランプ政権の出方見極めへ

フィリピン、中国の諜報活動へ懸念 トランプ政権の出方見極めへ

中国海警局の大型船「海警5901」=11日、フィリピン・ルソン島西方(比沿岸警備隊提供)(AFP時事)

フィリピン当局はこのほどマニラ首都圏で、国内の軍事施設の周辺で機密データを収集していた中国人スパイと疑われる人物を逮捕した。またフィリピン中部では、中国製とみられる水中ドローンが回収されるなど、中国による諜報(ちょうほう)活動への懸念が急速に強まっている。このような中、フィリピン政府はトランプ政権の「米国第一主義」政策が南シナ海問題に与える影響を見極めながら、外交戦略を模索する必要に迫られている。(マニラ福島純一)

マニラ首都圏のマカティ市で1月17日、国家捜査局(NBI)が、中国人技術者とフィリピン人2人をスパイ容疑で逮捕した。捜査当局によると容疑者らは、ルソン島各地にある軍事施設やインフラ施設などで、車両に搭載した3Dマップを作成する高度なスキャン装置を使ってデータ収集し、リアルタイムで中国に送信していた疑いが持たれている。

スパイ活動の対象には米国との防衛協力強化協定(EDCA)に基づき、米軍がフィリピン国内で使用できる複数の軍事基地も含まれていたことから、安全保障に関する懸念が高まった。これを受け国軍は、軍事施設での警備強化を実施すると発表した。

これに対し中国外務省の毛寧報道局長は、「根拠のない非難を広めるべきではない」と述べ、中国によるスパイ活動を否定し、フィリピン国内の中国人の権利と利益を守るよう求めた。

NBIによると逮捕された中国人は、人民解放軍国防科学技術大学の卒業生で、フィリピン人女性と結婚し、約10年間にわたってフィリピンに滞在していた。親族はスパイ活動を否定し、中国企業に雇われ車の試験運転をしていたにすぎないと主張している。

昨年12月には、フィリピン中部のマスバテ島沖で、漂流している中国製とみられる水中ドローンが回収されるなど、中国のスパイ活動に対する危機感が高まっていた。今回の中国人スパイの逮捕により、中国の諜報活動がフィリピン国内により深く食い込んでいる可能性が浮上し、懸念がさらに深まった形となった。

スパイ活動を巡る対立が深まる中、南シナ海では中国の威圧的な行動が再び目立ってきている。今月24日には南シナ海で海洋科学調査と砂の採取のためサンディケイに向かっていたフィリピンの漁業水産資源局の船舶が中国海警局と中国海軍に妨害された。中国海軍のヘリがホバリングで接近するなど、危険な状態となり調査活動は停止に追い込まれた。さらに25日には、中国海警局の船舶がフィリピン沿岸警備隊の船に対し長距離音響装置を使用した妨害を行った。

これらの動きを受け、フィリピンには国家安全保障の強化が求められているが、そのために米国の支援が不可欠だ。しかし、それには米トランプ政権との同盟関係の再評価が求められる。第1次トランプ政権では、南シナ海における中国の主張に対し強硬な姿勢を取っていたが、今回のトランプ政権が掲げる米国第一主義政策がフィリピンを含む同盟国に不確実性をもたらしているからだ。

そのため、フィリピンはトランプ政権の政策方針を見極めながら、日本などの近隣諸国との協力を強化して南シナ海での抑止力を維持し、中国との外交戦略を慎重に模索する必要に迫られている。

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