これまでの植林で育つ木々
「今を生きる人にも未来に生きる人にも優しい植林」
NPO法人アジア植林友好協会の宮崎林司理事長の言葉だ。
昨年12月にインドネシアのバリ島バトゥール山の麓で行われた植林ボランティアに参加してきた。植林場所は見渡せば草一本も生えていない溶岩地帯。容易に人を受け入れない厳しい現実が広がる。この黒い大地を緑豊かな地へ変えることなど本当にできるのか、という疑問は尽きない。
さらに別の問題もある。国際ボランティア団体などが海外で植林活動をする際、現地の人を雇い、日当を払って植林を行っている。だが、貧しい人たちの中には、せっかく植えた木をわざと抜いてしまう人がいるのだという。木を抜けば、また植林の仕事をもらえると考えてしまうわけだ。日本の場合、子孫のための植林は当たり前という文化が自然と根付いている。しかし、未来のための植林といっても、現実として未来を待つことができない人々がいるのも事実だ。
宮崎理事長たちは年に一度、このインドネシアの地で植林のボランティアを行いながら、取り組みを通じて植林文化の定着も目指している。「木を一本植えると、もう一本は心に植えられている」と話す宮崎理事長の思いは、バリ島の若者たちにも着実に受け継がれ始めている。
世界日報は創刊40周年となる2015年、記念事業として1000本の植林をこの地で行った。紙を消費する新聞社が植林に取り組む中で、今年50周年を迎える。植えられた木々が「世界日報の森」へと育つまで、これからも進み続けていきたい。
(文・小林久人)