トップ国際アジア・オセアニアASEAN同盟選択、中国が米抜き最多 バイデン大統領、首脳会議欠席

ASEAN同盟選択、中国が米抜き最多 バイデン大統領、首脳会議欠席

0 日 、 ビ エ ン チ ャ ン で 開 か れ た 東 南 ア ジ ア 諸 国 連 合 ( A S E A N ) 各 国 と 中 国 の 首 脳 会 議 に 出 席 す る 李 強 首 相 ( 左 端 ) 。 手 前 右 は フ ィ リ ピ ン の マ ル コ ス 大 統 領 ( 時 事 )
バイデン米大統領は、10月にラオスの首都ビエンチャンで開かれた東アジアサミット(EAS)に参加しなかった。こうした米国の間隙を縫う形で、中国が影響力を増大させている。東南アジア諸国連合(ASEAN)は「遠い米国」より「近い中国」に傾斜しつつあり、ASEANとの信頼関係構築に動いてきた日本の役割が問われている。(池永達夫)

EASはASEAN首脳会議時に開催され、ASEAN10カ国と日米中印露豪などによる首脳会議だ。

バイデン政権は、トランプ前政権が4年連続でEASを欠席、「ASEAN軽視」と後ろ指をさされたことを踏まえ、トランプ前政権からの路線転換を掲げた経緯がある。

バイデン氏は2021年のブルネイの首都バンダルスリブガワンで開催されたEASには、コロナ禍だったこともありリモート参加。また翌年のカンボジアの首都プノンペンで開催されたEASには、対面参加しただけでなく、米ASEAN関係樹立45周年を記念しワシントンで米国とASEANの特別サミットも開催した。

この時、バイデン氏はASEANに対する米国の永続的なコミットメントを示すものだと評価したものの、昨年のインドネシアの首都ジャカルタ首脳会議以後、2年連続で参加していない。体力不足か外交的情熱の欠落によるものかは不明だが米首脳の欠席は、米国のASEAN政策を披露する絶好の機会を逃しただけでなかった。こうした米国の間隙を縫う形で、中国の影響力増大の格好の材料となったからだ。

ASEAN10カ国の有識者らを対象にした年次調査で、対立する米中のいずれかと同盟を結ぶことが迫られた場合、中国を選ぶべきだとの回答が20年の質問設定以後初めて、米国を上回った。

調査はシンガポールのシンクタンクが年初、研究者や政府関係者など有識者約2000人を対象に実施した。調査結果では、同盟締結相手に中国を選んだ回答が過半数の50・5%を占め、米国は49・5%だった。昨年の調査では、米国が61・1%、中国が38・9%だったが、大きく形勢が逆転した格好だ。

今回の調査ではマレーシア、インドネシア、ブルネイ、ラオスで中国支持が大幅に増加し、7割以上となった。一方、中国と南シナ海で領有権争いを抱えるフィリピンは8割超が米国を支持し、ベトナム、シンガポールなども過半数が米国を選択。ASEAN各国で立場が異なるモザイク模様の現実があるものの、全体のトーンとして五星紅旗の中国になびきつつあるASEANの動向が懸念される。

マレーシア、インドネシア、ブルネイで中国支持が大幅に増加した背景には、イスラム国家特有の事情も絡んでいる。

イスラエルとパレスチナ自治区ガザの間で武力衝突が発生してから10月で1年が経過する中、ガザの死者は4万人を超え、いまだ戦闘終結は見通せないままだ。イスラム教徒が多いマレーシアやインドネシア、ブルネイといった東南アジアのイスラム国家にとっても、イスラエルの同盟国であり最大の後ろ盾となっている米国への潜在的反発は根強いものがあり、ガザ地区の犠牲者増大で反米感情が増大している事情もある。

また経済成長を支える「チャイナ・マネー」の存在感も大きい。10年前、約66億米㌦(約9900億円)だった中国からASEANへの海外直接投資(FDI)は、2年前には131億米㌦(約1兆9650億円)に倍増。ASEANに流入したFDIに占める割合は5・9%から7・6%に増大している。ただASEAN各国へのFDIは、依然として米国や日本からのものが中国より多い。

それでも貿易面での中国の存在感は圧倒的だ。ASEANの貿易総額に占める中国の割合は、22年度で18・8%。米国の10・9%や欧州連合(EU)の7・7%、日本の7%を大きく引き離し、ASEAN各国の最大貿易相手国は中国となっている。

いずれにしても札束攻勢と武威に頼る中国を牽制(けんせい)するため、自由で開かれたインド太平洋構想を持ち、「ハート・トゥ・ハート」の福田ドクトリン以来、ASEANとの信頼関係構築に動いてきた日本の役割が問われている。

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