【NEWSクローズ・アップ】露朝の脅威 北東アジアで増大 「北朝鮮非核化諦めるな」

日米中韓専門家が論議 言論NPO主催

北朝鮮の非核化を議論する日米中韓の安全保障専門家= 4日、東京都港区の国際文化会館

北朝鮮とロシアが軍事同盟的な動きを見せ、周辺国家では緊張状態が増している。9月3日から4日にかけてシンクタンク「言論NPO」(工藤泰志代表)主催の「アジア平和会議」が行われ、日米中韓の4カ国の専門家が、安全保障上の最大リスクに挙げられる朝鮮半島問題を中心に議論した。米中対立がある中でも、4カ国で北東アジアの安全保障問題を話し合う「政府間の枠組みが必要」とする議長声明が発表された。(竹澤安李紗、写真も)

言論NPOは今年7月から8月、日米中韓の外交・安全保障の専門家を対象に「北東アジアの平和を脅かす10のリスク」についてアンケート調査を実施した。4カ国のシンクタンク研究者や政府幹部OB、軍関係者、大学の安全保障専門家など計161人(日本50人、米国51人、中国50人、韓国10人)が回答した。

8点満点で採点された10項目のうち、「北朝鮮が核保有国として存在し、ミサイル発射などの挑発的な行動を繰り返している」ことが5・95点で、最大のリスクに判断された。次に、「サイバー攻撃の日常化」が5・85点、「米中対立の深刻化が、アジアの経済や安全保障における緊張を高めていること」が5・64点と続いた。これ以外にも、「韓国と北朝鮮の関係が悪化し、朝鮮半島に緊張が存在すること」など、北朝鮮情勢に関する四つのリスクが入った。

昨年の調査と同様の結果となった朝鮮半島問題だが、韓国と日米中で問題意識に温度差があることが浮き彫りになった。韓国の専門家は、ロシアと北朝鮮が今年6月に締結した「包括的戦略パートナーシップ条約」により両国が軍事同盟の水準に上がったことを警戒。これに対し、日米中は地域紛争に発展する可能性を冷静に評価している。

この調査結果を受けて開かれた「アジア平和会議」の2日目には、4カ国の専門家が登壇。公開フォーラムで北朝鮮の非核化の議論が行われた。北朝鮮を巡っては、ロシアを含めた6カ国協議の決裂や米朝首脳会談など、非核化に向けた外交は難航している。

韓国の元軍准将のホ・テグン前国防部国防政策室長は北朝鮮の核・ミサイル開発に対し、核兵器の不拡散に関する条約(NPT)の枠外で核兵器と運搬手段を改良していると指摘。「金正恩体制は核兵器を先制攻撃の手段であると公言した政権」と強く非難した。その上で、北朝鮮の非核化を諦めた場合、国際社会が「核兵器国」として公式に認めることは避けなければならないと強調した。具体的な対策として、①北朝鮮への外交努力②多国間制裁の新たな枠組み③北朝鮮の国民向けに金体制に対する問題意識を覚醒させること――を提案した。

中国も露朝の軍事関係強化を警戒する。国際政治学者の賈慶国(ジャチングオ)・北京大国際関係学院教授(前院長)は、「非核化を推進する国際的な力が弱まり、露朝の軍事協力は拡大した」と分析した。非核化に向けた多国間協議の在り方については、「中国の関与なしに北朝鮮問題を解決できるという考えは間違っているだけでなく、危険だ」と語気を強め、日米中韓4カ国での協力を求めた。

同会議では、台湾海峡を巡る議論が話題になると、中国と米国の意見の相違により、場の空気が緊張した場面もあった。その場を仲介するように宮本雄二元駐中国大使は、北東アジアの平和は米中関係の安定化が重要と語った。さらに、北朝鮮問題における4者協議の枠組みでは、台湾問題と分けて考えなければならないと訴え、「米中が衝突しないよう努力するのが日本外交には求められる」と強調した。

今回で5回目となる「アジア平和会議」では、初めての試みとなる議長声明を発表した。声明では「力による抑止は現状維持を超えて双方の軍事拡大と対立を止めることはできない」ことを確認。「紛争のリスクを管理し共通の課題で力を合わせる努力」が北東アジア地域で必要と結論付けた。言論NPOの工藤泰志代表は、「この4カ国会議を将来、政府関係者も参加できる仕組みに発展させたい」と意気込んだ。

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