ミンダナオ島ダバオ・デ・オロ州の鉱山地帯にある居住地が大規模な地滑りにのみ込まれ、鉱山会社の労働者など100人近くが死亡する惨事となった。鉱山会社は採掘地域の外で起きた災害だとして責任を否定する一方、環境保護団体は鉱山事業による環境破壊が地滑りの原因だとして責任の追及を政府に求めている。大雨によるミンダナオ島の被災者は150万人まで増加し、インフラ被害も20億ペソ(約54億円)に達した。(マニラ・福島純一)
地滑りは2月6日にマコ町の山間部にある集落で発生し、50戸以上の住宅のほか鉱業大手アペックス・マイニング社の鉱山で働く労働者の送迎をしていたバス2台も巻き込まれ、捜査活動が打ち切られる22日までに確認された死者は98人に達した。災害発生から60時間後に土砂の中から3歳児が無事に発見されるなど奇跡的な救出劇もあったが、8人の行方不明者を残す結果となった。
捜索活動には国軍部隊が動員されたほか、米海兵隊が2機の輸送機を派遣し物資の輸送に協力した。ダバオ・デ・オロ州の防災管理局は、過去10年で最悪の自然災害だと指摘した。
実はマコ町では2008年にも地滑りが発生しており、地方自治体によって建設禁止区域に認定されるなど、かねて危険性が指摘されていた。その際に住人たちは再定住地に移住させられたが、鉱山が近いため再び多くの労働者が舞い戻り、建設禁止を無視して住宅などが建てられていた。労働者の送迎用にバス停も設置されるなど、自治体や鉱山会社も建設禁止区域であることを知りながら、意図的に見過ごしていた可能性も指摘されている。
多くの労働者が死亡したアペックス社だが、捜索活動に全面支援を約束する一方で、地滑りが発生した地域は鉱山の敷地には含まれていないと強調。繰り返し災害への責任を否定している。また環境天然資源省もこの主張を認め、今後何らかの過失が明らかになれば業務停止命令を出す可能性を示唆する一方で、今のところは出さない姿勢を保っている。
しかしその一方で環境保護団体は、同社の事業が環境に与えた影響が地滑りの一因になっているのは明らかで責任は免れないと指摘。政府に対し同社の責任を徹底的に調査し、被害者の救済や似たような災害の防止に全力を尽くすべきだと主張した。
政府の防災対策を担う国家災害リスク軽減管理評議会によると、今回ミンダナオ島を襲った大雨による被災者は150万人に達し、そのうち27万人が避難を強いられた。損害を受けた住宅は約5000戸、インフラへの被害は20億ペソ以上、農業への被害も5億5000ペソに達するなど、複数の地域が災害状態を宣言し復旧や被災者への支援を急いでいる。このようにフィリピン南部が大雨に悩まされる一方で、マニラ首都圏ではエルニーニョ現象による雨不足が続き干ばつが予測されるなど、異常気象による影響は複雑さを増しており、政府はより迅速な防災対策が求められている。