14日インドネシア大統領選 本命の国防相 過半数が焦点 現職ジョコ氏から支持

米中両天秤の外交路線継承

インドネシア大統領選の第1回討論会に参加したプラボウォ 国防相(手前左)とギブラン中ジャワ州ソロ市長(同右) = 2023年12月、ジャカルタ(時事)

人口約2億7000万人を擁するインドネシアの大統領選が14日に行われる。本命はプラボウォ国防相ながら、今のところ世論調査ではぎりぎり過半数を獲得できるかどうか。過半数に届かなければ、選挙戦は6月の決選投票にもつれ込むことになる。大統領選に2度、挑戦しながら敗退してきたプラボウォ国防相が勝利すれば「3度目の正直」となる。(池永達夫)

大統領選はプラボウォ氏(72)と、初挑戦のガンジャル前中ジャワ州知事(55)、アニス前ジャカルタ特別州知事(54)の三つ巴(どもえ)戦だ。米国同様、副大統領とペアで選出する。

プラボウォ氏と副大統領候補として組むのは、ジョコ大統領の長男ギブラン氏(36、中ジャワ州ソロ<スラカルタ>市長)。正副大統領の被選挙権を持つのは40歳以上と規定されているが、昨年10月、憲法裁判所が「地方首長の経験者は40歳未満でも可」と裁定を下したことで、この制限をクリアした。ただ憲法裁長官がジョコ大統領の義弟だったため、中立性に疑問符が付くと批判するメディアも多い。しかし、ギブラン氏がプラボウォ陣営の副大統領候補に収まったことでプラボウォ氏の支持率を押し上げることになった。

さらにプラボウォ氏の支持率が上昇したのは、選挙終盤になってジョコ大統領のバックアップが鮮明になってからだ。それまでジョコ大統領は中立を保ち、立場を明らかにすることはなかった。

大工の子として生まれ、家具製造輸出会社を経営した後、スラカルタ市長を経て大統領に上り詰めたジョコ氏は「初の平民宰相」として国民から慕われ、まもなく任期終了を迎えようとする今でも8割近い支持率を誇り圧倒的人気を博す。

1月30日発表の世論調査では、ジョコ大統領路線継承を謳(うた)ったプラボウォ陣営の支持率が50・7%と初めて過半数を超え、20%台でしかなかったガンジャル陣営とアニス陣営を大きく引き離している。

プラボウォ氏が、前回と前々回の大統領選で敗北を喫した相手はジョコ氏だった。今回はそのジョコ氏から支援を受け「3度目の正直」を目指す。

大統領選で紛らわしいのは、ジョコ大統領もギブラン副大統領候補も共に闘争民主党に所属していることだ。現政権の与党である闘争民主党は、大統領候補にガンジャル前中ジャワ州知事を出している。ジョコ大統領と闘争民主党の党首メガワティ元大統領との不仲は今に始まったことではないが、今回の分裂選挙でジョコ大統領はメガワティ氏と袂(たもと)を分かつ格好となった。

ジョコ大統領とすれば2期10年の任期を通して進めてきたカリマンタン(ボルネオ)島東部への首都移転など、ジョコ路線の継承をプラボウォ氏とギブラン氏に託そうとの思惑が働いている。

なおインドネシアにとって中国は最大の貿易投資相手だ。だが中国との緊密な経済関係と同時に、安全保障分野ではインド太平洋地域での米国のプレゼンスを歓迎する。インドネシア・米両軍による軍事演習も継続している。インドネシアは南シナ海にあるナトゥナ諸島周辺の排他的経済水域(EEZ)で、中国と領有権を巡る対立を抱えており、中国を牽制(けんせい)するパワーを必要とする。プラボウォ氏はこうした大国間競争に巻き込まれることなく、自国の利益を最大化する自主外交路線を継承する方針だ。

一方、アニス氏はこの南シナ海問題について「解決するカギは東南アジア諸国連合(ASEAN)だ」とし、「インドネシアはASEANの盟主に戻る必要がある」と主張する。またガンジャル氏は、中国との確執を避ける「暫定合意」の必要性を説く。

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