ジブチに次ぐ中国海外基地へ
カンボジアを地図で見ると、東西から巾着の口ひもをキュッと締めたような海岸線になっている。国土の形は、国力の歴史を物語る。6世紀にわたって栄華を極めたアンコール王朝が15世紀に幕を下ろして以後、坂を転げ落ちるように衰退していったカンボジアは、フランスの植民地時代を経て隣国ベトナムとタイから交易に有利で有事には攻撃拠点にもなる島を含む海岸線を蚕食された。
その海岸線の要衝に、ASEANが束になってもかなわない圧倒的軍事力を有する中国人民解放軍が入って来た。しかも今回、リアム海軍基地に寄港した中国海軍のフリゲート艦文山号と巴中号の2隻は、カンボジア海軍と共同演習を行い両国の関係を軍事協力できるところまで引き上げた。
目白大学大学院講師の澁谷司氏は「中国が全面出資して改修しているリアム海軍基地は、アフリカ東部ジブチの基地に次ぐ人民解放軍の新たな海外拠点となる可能性が高い」と指摘する。
各国海軍のテキストとなっているマハンの「海上権力史論」で言及される「シーパワー」には、海軍力だけでなく港湾設備も入っている。 このままだと、「シーパワー」増強に余念のない中国の空母機動部隊が、いずれリアム港を寄港基地とする日がやって来る。