フィリピン南部ミンダナオ島の大学で爆弾テロがあり4人が死亡し50人が負傷する惨事となった。爆弾は学生が参加するミサの会場で爆発しており、過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出していることから、カトリック教徒を狙った犯行の可能性が高い。マルコス大統領は「外国人テロリスト」による犯行と断定し、強く非難。治安当局は各地で警戒を強化するなどの対応に追われた。(マニラ・福島純一)
南ラナオ州マラウィ市で3日、ミンダナオ州立大学の体育館で行われていたカトリックのミサを狙った爆弾テロで4人が死亡、50人が負傷した。犯行直後、ISが犯行声明を出した。マルコス大統領は「外国人テロリストによって行われた愚かで凶悪な行為を可能な限り強い言葉で非難する」と声明で述べ、制裁を科すことを誓うとともに、治安当局に各地の安全を確保するよう命じた。
当初、犠牲者の1人の身元が不明だったことから自爆テロの可能性も指摘されたが、後に身元が判明し自爆テロではないことが分かった。
治安当局が防犯カメラの映像から体育館に爆弾を置いた容疑者2人を特定し、ISとも関連があるイスラム過激派のダウラ・イスラミヤのメンバーの犯行であることが分かった。8日までに容疑者の1人が逮捕され、当局が残りの容疑者の行方を追っている。
ISが犯行声明を出しているが、直前の2日に南マギンダナオ州の軍事作戦で、ダウラ・イスラミヤのメンバー11人が国軍の軍事作戦で殺害されていることから「報復テロ」との見方も拭い切れない。治安当局はISの関与を含め、逮捕した容疑者を取り調べ、事件の動機を解明する方針だ。
今回の爆弾テロを巡っては、治安活動や情報活動を巡る議論も起きている。元国家警察長官のデラロサ上院議員は、爆弾テロの前夜にテキストメッセージなどで爆破予告が拡散されていたことから、治安当局による「情報活動の失敗」があった可能性を指摘した。
これに対しテオドロ国防相は、失敗はなかったと国家警察や国軍を擁護し、提供した情報を適切に評価しなかった側の過失を強調した。その上で、「もし敷地内に警察や軍隊がいたとしたら、この事件を未然に防ぐ適切な措置が講じられていただろう」と述べ、国軍や警察の立ち入りを制限する大学側の方針を見直すべきだと主張した。
爆弾テロが起きたマラウィ市と言えば、2017年にISが関連するアブヤフやマウテグループなどのイスラム過激派によって5カ月にわたり占拠され、奪還を目指す国軍と激しい交戦で1000人以上が死亡したことが記憶に新しい。破壊され尽くした同市は復興途上で、街中にはいまだに戦闘の爪痕が残る。
フィリピン国内では歴代政権による掃討作戦で、イスラム過激派の弱体化が進み、爆弾テロや誘拐事件も激減していた。それだけに今回の爆弾テロは、マラウィ市の復興を進める政府や住民にも大きな衝撃となった。