人の気配ない豪華リゾート
ゴルフ場とホテルをセットにした「フォレスト・シティー・ゴルフリゾート」も開業している。米国の著名ゴルファー、ジャック・ニクラス氏が設計したゴルフ場と中国人向けに造られたウオーターハザードを庭園の池のようにあしらったものが売りだというが、どちらも人の気配がしない。
病院は地図の上でこそ、総合病院が掲載されているものの、未(いま)だ小さな診療所1軒という状況だ。住民が実在しないのだから、病院経営が成り立つわけがない。

かつてマレーシアは、貿易港として稼いだシンガポールの繁栄のおこぼれにあずかろうと、海峡を挟んだマレーシア側にも格安の貿易港を造ったことがある。だが、港湾施設だけ造っても一朝一夕に積み荷の処理や再処理ができるようになるわけがなく机上の空論に終わった。
今回の碧桂園のプロジェクトも似たようなイソギンチャク商法だが、コロナ禍と中国の不動産バブル破綻の二重苦に見舞われ、船は出航したものの沈没寸前という嵐の真っただ中にある。
免税店から出てきたシンガポーリアンは、「ここはリカーショップとして価値があるだけ。2カ月に1度は、買いにくる」と言った。
謳(うた)い文句だった「20年後の70万人都市」は、雨期に入ったマレーシア南部で霧の中にかすんでいた。