日比「黄金時代」に期待 岸田氏 海洋秩序安定化を強調

中国の進出念頭に連携強化 円滑化協定などの交渉開始

歓 迎 式 典 に 臨 む 岸 田 文 雄 首 相 ( 中 央 右 ) と フ ィ リ ピ ン の マ ル コ ス 大 統 領 ( 同 左 ) = 3 日 、 マ ニ ラ の マ ラ カ ニ ア ン 宮 殿 ( A F P 時 事 )

11月3日にフィリピンを訪問した岸田文雄首相はマルコス大統領と会談し、南シナ海で軍事的行動を強める中国を念頭に、フィリピンとの連携強化を図るための政府安全保障能力協力支援(OSA)や部隊間協力円滑化協定(RAA)などについて話し合った。また日本の首相としては初めて下院で演説を行い、両国関係の重要性や中国の海洋進出を念頭にした連携の必要性を強調した。(マニラ・福島純一)

岸田氏は訪問初日にマラカニアン宮殿でマルコス氏と会談を行った。会談では2月にマルコス氏が訪日した際に議題となった協力案件について話し合われ、そのうちの一つであるOSAによる6億円相当の沿岸監視レーダーシステム供与で合意した。また岸田氏は管制レーダーの供与に伴う防衛装備や技術協力、巡視船供与などを継続し、フィリピンの海洋安全保障能力の向上を支援していくことを強調した。

RAAを巡る交渉を開始することでも一致し、両国が安全保障の分野でより緊密な関係を構築していく動きも本格化した。RAAとは自衛隊と他国の軍隊の相互アクセスを円滑化することで共同訓練などをより容易にする協定で、すでにオーストラリアや英国と締結されており信頼関係の向上が期待されている。とりわけ軍事能力が低いフィリピンでは、自衛隊との訓練によって中国の海洋進出を念頭にした作戦遂行能力の底上げが期待できる。

会談ではインフラ整備などの経済支援についても話し合われ、岸田氏はマルコス政権の「ビルド・ベター・モア」政策を官民で積極的に支援する意思を示した。日本はすでにマニラ首都圏の地下鉄建設を支援しているが、フィリピン政府が別の鉄道整備で中国の政府開発援助(ODA)を取りやめたことで、日本にODAを要請すべきだとの声も強まっている。

また中国の海洋進出を巡る地域情勢に関しては、深刻な懸念を共有し、一方的な現状変更の試みは容認できないということで一致した。

4日に岸田氏は日本の首相としては初めて下院での演説に臨んだ。演説で岸田氏は、両国は困難な時代を乗り越え、30万人以上のフィリピン人が日本に滞在するなど交流は深化し「黄金時代」に入ったと強調した。その上でウクライナ情勢や中国の海洋進出を念頭に「国際社会は歴史的な転換点を迎え、法の支配に基づく国際秩序は重大な危機にさらされている」と指摘、安全保障や海上安全能力の向上に貢献するためフィリピンに警戒管制レーダーを提供することで合意したことに触れた。また、フィリピンや米国との戦略的な協力を一層深め、法とルールが支配する海洋秩序の維持と地域の安全に貢献していく方針を示した。

民間調査会社のパルス・アジアが9月に行った世論調査で、経済関係を強化したい国として日本が米国に次いで2位に選ばれた。経済関係を強化したい国を三つ選択する世論調査では、米国が74%で首位、日本は55%で2位だった。3位は46%のオーストラリア、40%のカナダ、26%の欧州連合(EU)が続いた。中国は19%と低く、冷え込んだ両国関係が際立つ一方、日本の高い存在感と期待が浮き彫りとなった。

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