インド洋 21世紀の橋頭堡に 選挙控える南アジア モルディブ 親中路線回帰へ

印パ・バングラ 共に与党優勢

モルディブのムイズ次期大統領=2日、マレ(AFP時事)

南アジアは先月に行われたモルディブ大統領選を皮切りに、これから選挙の季節を迎える。19世紀を欧米中心の大西洋の時代とすると、20世紀は米国の覇権とアジアが伸びた太平洋の時代、そして21世紀は南アジアと最後のフロンティア・アフリカに接するインド洋の時代が見込まれる。モルディブでこそ、政権交代が起きたものの、インド、パキスタン、バングラデシュでは与党優勢となっている。(池永達夫)

インド洋の島嶼(とうしょ)国モルディブで先月30日、大統領選の決選投票が行われ、親中派で首都マレ市長のムイズ氏(45)が親インド派の現職、ソーリフ大統領(61)に勝利した。ソーリフ氏は5年前の大統領就任後、それまでの親中路線を踏襲せず、隣国インドとの関係修復に尽力した経緯があるが、選挙に敗北したことで改めてモルディブは親中路線に回帰する見込みだ。

選挙戦でもムイズ氏は、海上の安全保障のためモルディブに駐留中のインド軍を「脅威」扱いし、早期撤収を求めていた。

21世紀がインド洋の時代になるとすれば、最大の牽引(けんいん)役として期待されるインドは、来年4~5月にかけ総選挙が実地される。14億人という世界最大の人口を擁し広大な国土を持つインドの総選挙は、全国を7区に分け1カ月以上の投票期間が必要となる。

英国をモデルとした議会多数派が政権を樹立する議院内閣制のインドでは、総選挙の結果次第で新政府の色は決まる。今のところ、モディ首相率いるインド人民党(BJP)優勢は変わらない。

BJPへの高い信認度を支えているのは、モディ政権の実績だ。モディ政権は9年間で、国内総生産(GDP)を63%成長させ、2014年の世界10位から、ロシアやブラジル、イタリア、フランスをごぼう抜きし5位にまで浮上させた。

レッドカーペットでモディ首相をワシントンに迎えたバイデン米大統領は今夏、「国連安保理に日独印を加えるべきだ」と対印関係重視路線を敷くなど対外的にもインドの威信は高まっている。

BJPに対抗するラフル・ガンジー氏率いる国民会議派は今夏、同党主導で野党連合「インド国家発展包括的連合(INDIA)」を結成した。これには実に野党26党が集結し、文字通り野党が束になって挑む格好だが、それでもBJPを破るのは難しい情勢だ。

またパキスタンの総選挙は、来年1月下旬に行われる。下院解散が8月に行われたため、憲法上11月までの実施が求められたが、新たな国勢調査に基づく選挙区の区割りを見直すために延期された。野党指導者のカーン前首相は汚職罪により5年間の公職禁止となっており、次の総選挙には出馬資格がなく、野党は目玉となる有力候補者の人材を欠いている。ただ総選挙の結果がどうであれ、今のところパキスタンの親中路線が変わる趨勢(すうせい)にはない。

さらに年末もしくは来年年初に行われるバングラデシュの総選挙は、与党アワミ連盟優勢は変わらず、14年間続いたハシナ政権続投の可能性が高い。ただ、長期政権への反発と国民生活を脅かす深刻なインフレで、野党バングラデシュ民族主義党(BNP)が風をつかめば政権交代のチャンスもある。総選挙の前哨戦となった6月の4都市市長選では、BNPの候補者がアワミ連盟の候補者を抑え4市長とも勝利している。

なおバングラデシュ最大の輸入相手国・中国との関係は、2大政党のいずれであっても変わる趨勢にはない。中国はインド包囲網を形成するバングラデシュ、パキスタンとの関係重視路線を取ってきた。

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