中国海警局 比艦船に放水 南シナ海に新たな火種 座礁船撤去巡り食い違い

フィリピンの船に向けて放水する中国船(比沿岸警備隊が8月6日公開)(AFP時事)

フィリピンと中国が領有権を主張する南シナ海で、中国海警局の船がフィリピン艦船に放水を行いフィリピン政府が強く抗議した。放水を受けた船は、フィリピン国軍の前哨基地となっている座礁船に補給に行く途中だった。中国はフィリピン政府と座礁船の撤去で合意したと主張し実行を求めたが、マルコス大統領は協定の存在を否定している。世論調査で79%が中国が「最大の脅威」と認識するなどフィリピン国民の反中意識も強まっている。(マニラ・福島純一)

南シナ海のアユンギン(中国名・仁愛)礁で8月5日、フィリピン軍が実効支配の前哨基地として使っている座礁船「シエラマドレ」に補給に向かうフィリピン艦船が中国海警局の船から放水を受けるなどの妨害活動を受けた。フィリピン外務省は中国大使を呼び出して厳重抗議し、フィリピンの排他的経済水域(EEZ)内での違法行為として停止するよう要求した。

これに対し中国は、過去の協定に従い座礁船を撤去するようフィリピン政府に要求した。しかしマルコス大統領はそのような合意は両国間には存在しないと指摘し、「仮にあったとしても私はそのような協定は破棄する」と述べ領有権を死守する構えを見せた。この中国の協定に関する主張を巡り、国内では過去の大統領と密約があったのではとの臆測が流れ、政界では犯人探しが始まった。

現在、下院議員として政界に復帰しているアロヨ元大統領は、「中国や他の国に対してそのような約束をしたことはなく、政府関係者にそのような約束をする権限を与えたこともない」と密約疑惑をキッパリ否定。

疑いの目は今年7月に中国を訪問し、習近平国家主席と会談するなど「親中派」として知られるドゥテルテ前大統領に向けられ、左派系下院議員などを中心に説明を求める声が強まった。沈黙する本人に代わりドゥテルテ政権で事務局長を務めたサルバドール・メディアルデア氏が「そのような約束を彼は決してしない」と弁明したが、疑惑を払拭(ふっしょく)するには至っておらず、下院で調査に乗り出す動きも出ている。

ほかにも存命の元大統領ではエストラダ氏も密約を否定しているほか、最近の大統領としては故アキノ氏もいるが、ハーグの常設仲裁裁判所に南シナ海の主権を巡り中国を提訴したことで知られる「反中派」であり、密約の可能性は極めて低いとの見方がもっぱらだ。密約があったにせよマルコス氏は破棄すると明言しており、座礁船の撤去という新たな争点を巡って中国との対立は避けられそうにない情勢だ。

緊張が高まる中、8月24日には南シナ海で海上自衛隊が、米国、オーストラリア、フィリピンの艦船と共に洋上での補給など共同訓練を行い各国の連携を強調。同海域で高圧的な行動を続ける中国を牽制(けんせい)した。

さらにフィリピン国軍は、駐留している兵士の過酷な環境を改善するために、老朽化が進む座礁船を改修する計画があることを明らかにした。ブラウナー国軍参謀総長は「フィリピンのEEZ内であり、われわれにはすべての権利がある」と主張した。

政治コンサルタント会社のパブリカス・アジアが1500人のフィリピン人を対象に行った国や地域連合に対する信頼度調査で、日本が55%でトップ、東南アジア諸国連合(ASEAN)が45%、カナダが44%で続いた。一方、回答者の79%が中国を「最大の脅威」と認識していることも明らかとなるなど、マルコス政権下で国民の反中意識が加速していることも浮き彫りとなった。

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