トップ国際アジア・オセアニア13日にタイ首相指名選挙 “一揆勝負”で決まるか

13日にタイ首相指名選挙 “一揆勝負”で決まるか

第1党・前進党 上院議員が鍵 第2党・貢献党 高齢化で焦り

4日、バンコクの国会前で支持者らにサインをする 前進党のピター党首(前進党提供)(時事)

タイ上下両院による首相指名選挙は、13日に行われることが決まった。だが政治家が二枚舌、三枚舌を使うのは、どこでもあること。第1回首相指名選挙ですんなり首相が決まるとは限らず、一波乱も二波乱もあり得る。(池永達夫)

 13日の首相指名選挙は、下院議員(定数500)と軍政下で任命された上院議員(定数250)が合同で投票する。前進党を中心に8政党が連立合意しているものの、その合計議席数は312議席。この数は下院の過半数を超えており、政権運営するには問題がないが、首班指名獲得に必要な376議席には、一部幹部が支持表明している前政権の連立与党・民主党(25議席)など他政党を巻き込むか、上院議員の“一本釣り”で残る64議席を手当てするしかない。

ただ5月の総選挙で第1党に躍進した前進党は、党首の42歳のピター氏に代表されるように働き盛りの若い政党だ。今回、妥協に妥協を重ねて政党本来の理想を抑え込むことに懐疑的だ。前進党が、最も恐れるのは支持者らから「なんだ前進党も利権にまみれる、ただの政治屋集団か」と見捨てられることだ。

それより次の選挙で圧勝する方に賭ける意欲も時間もある。その意味では、開き直れる前進党にバーゲニングパワーがある。

一方、第2党のタクシン派の貢献党には時間的余裕がなく、次回の選挙まで待つことができない。政権樹立に関与し、利権にもあやかりたいと貢献党の政治家になったものの、クーデターで政権から放り出されて以後の9年間、ずっと野党の“冷や飯”生活を強いられた。齢(よわい)を重ね、前進党のように若くもない。だから今回は最後のチャンス。何が何でも与党に回りたいとの焦りがある。

第1党の前進党と第2党の貢献党の確執は、4日の下院議長選出が焦点だった。首相選出の日程だけでなく、首相選出シナリオの描き方も議長次第の部分が大きいからだ。

首相選出シナリオというのは、第1回で決まらない場合、第1回候補を消去して新たな候補を出すのか、あるいは第1回候補のまま、再選挙するのかといったことだ。

前進党が描いているのは、ピター党首を首相候補とし、第1回首相指名選挙で決まらなくても、第2回、第3回と続けることで保守派の上院議員を切り崩せるのではないかと読んでいる模様だ。

というのも同選挙は、公開投票で行われる。総選挙では前進党が大躍進を遂げ、タイが変わろうとしている時、それに反旗を翻し続けることは難しくなるとの認識があるからだ。また、前政権で与党だった民主党が連立に加わるケースもあり得るとの読みもある。5月の総選挙で惨敗した民主党は、党首が辞任しているものの、アピシット元首相が党首に再復帰する可能性が高くなっている。アピシット元首相は、貢献党とは確執があり深い溝があるものの、前進党とはわだかまりは皆無だ。民主党とすれば最大の“身売り時”で、高く売り抜けることが可能だ。

それでも難しい場合、最後の手が来年5月まで再選挙をし続けるというものだ。というのも、上院議員が首相指名選挙の投票権を持つのはそれまでしかないからだ。

そこまで待てば、下院だけで首相指名選挙が実施され、ピター党首を首相とした8党連立政権はすんなり樹立できる。

一方の貢献党は、第1回で決まらない場合、ピター氏を降ろし、貢献党から首相候補を出したいところだ。だからこそ、その裁定権限を持つ下院議長に最後までこだわった。

だが結局、下院議長は第1党の前進党からでも第2党の貢献党からでもなく、第3党の国民国家党(9議席)のワンムハマドノー党首が就任した。そのワンムハマドノー下院議長が、どう采配を振るうのかがこれからのタイの政治を決めることになる。

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