トップ国際アジア・オセアニア米、インド首相を国賓待遇 巨大市場・製造拠点にも期待 陰の主役は軍事大国化の中国

米、インド首相を国賓待遇 巨大市場・製造拠点にも期待 陰の主役は軍事大国化の中国

22日、ワシントンのホワイトハウスでインドのモディ首相(右)を迎えるバイデン米大統領(UPI)

インドは中国に次いでロシアの戦時経済を支えてきた。ロシアから大量の原油を格安で購入し、ウクライナ侵攻を非難する西側諸国とは一線を引いたままだ。また「世界最大の民主主義国家」といううたい文句のインドながら、自由度ランキングの低さが顕著だ。それでもバイデン米大統領は先週、レッドカーペットを敷いてインドのナレンドラ・モディ首相をワシントンに迎えた。(池永達夫)

2年半前に発足したバイデン政権が国賓待遇で外国首脳を迎えたのは昨年末の仏大統領、4月の韓国大統領に続き3人目。インド首相の国賓訪米は、実に15年ぶりのことだった。英BBC放送は、米国の歓迎ぶりを「ワシントンがインド首相のためにレッドカーペットを広げている」と伝えた。

 こうした米国の手厚いもてなしの背景には、中国の存在がある。経済発展による富を軍備増強へと振り向けた中国人民解放軍が、安全保障上の脅威となりつつある中、中国の後背地でありユーラシア南部に位置する南アジアの要衝インドを引き寄せておくことは地政学的要請でもあったからだ。米国にとって非同盟を国是とするインドを同盟国化することはかなわないまでも、台湾に対し露骨な軍事的威圧をいとわなくなった中国を背後から牽制(けんせい)するパワーが存在することの地政学的メリットは大きなものがある。

米印両国は今回、半導体や重要鉱物、技術、宇宙協力、防衛などの分野で協定を結んだ。特筆すべきは、インド戦闘機のジェットエンジン共同生産と武装無人機シーガーディアン(MQ9B)を米国から購入することに合意したことだ。中国の軍事的脅威が高まる中、米印の安全保障関係の深化は大きな意味を持つ。

米印は過去数十年間に関係を深め、特に安全保障に関してはゼロに近い状態から構築してきた歴史があることを考慮すると感慨深いものがある。無論、軍装備の6割をロシアに依存しているインドにとって、軍事面でのロシア頼りの現状を変えるべく国内生産の体制を充実させ、調達先を増やすことが可能になった今回の協定締結は渡りに船といったところだ。

とりわけロシアのウクライナ侵攻の長期化で、避けられなくなったロシア製軍装備品の枯渇状況から脱却できる道筋がついたことのインド側のメリットは図り知れないものがある。米国側にしても、インド国内の防衛産業が育成されることで、アジアの他の民主主義国家へ武器輸出が可能になる。

さらに、中国に取って代わりうる巨大市場と製造拠点への期待も後押しする。

今回、モディ首相は米企業トップらとも相次いで面会。米国の半導体大手「マイクロン・テクノロジー」がインドに27億ドル投資し、半導体組み立て工場を新設することでも合意した。

インドは国際社会の中で、トップクラスの経済成長率を誇り、国内総生産(GDP)は5年以内に日独を追い越すと予想されている。

若者が多く、潜在的経済活力に富むインドを米国が取り込むことで、中国への依存を減らすためのサプライチェーン(供給網)移転や、将来の紛争で重要な役割を果たす可能性のある先端技術の優位性を担保することの意義は図り知れない。

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