【ワールドスコープ】フィリピン、マヨン火山で溶岩流出 住人2万人避難、「噴火の可能性」

自治体の観光資源化に批判も

フィリピンのルソン島南部アルバイ州にあるマヨン火山の活動が活発化し、住民2万人が避難、政府や自治体が支援を開始した。フィリピン火山地震研究所が警戒レベルを引き上げる一方、マヨン火山を観光資源としている地元自治体は観光客の増加を予測し、安全な見物を呼び掛けている。(マニラ・福島純一)

フィリピン火山地震研究所は8日、マヨン火山の活動活発化を受け、警戒レベルを2から3に引き上げると発表した。同研究所は火口からの溶岩流出で落石、火砕流などが多発していると指摘し、「危険な噴火の可能性が高まっている」ことから警戒レベルを上げたと説明。比較的ゆっくりとした溶岩の流出の状況などから、鎮静化には少なくとも3カ月を要すると分析した。

マヨン火山はその美しい円錐形から戦前の日系移民に「ルソン富士」とも呼ばれていたフィリピン有数の活火山で、2014年にも警戒レベル3が発令され、数万人が避難した。

国家災害リスク削減委員会(NDRRMC)によると、19日までに危険区域から退去し避難所に移動した住民は約2万人(約5000世帯)に達した。警戒レベル3が発令されたことを受け、火山の半径6キロの危険区域は立ち入りが禁止され、住民は避難を命じられた。危険区域への立ち入りを防止するため、各地で警察による検問が実施されている。

アルバイ州のラグマン知事は、3カ月間に及ぶ避難民の支援には約2億ペソ(5億円)の資金が必要だと推定。州政府の予算では足りない1億6000万ペソの資金提供を政府に要請した。

今のところ溶岩流や落石などによる直接的な被害は確認されていないが、保健省によると避難所で風邪や呼吸器疾患などの体調不良を訴えた避難民は600人以上に達しており、避難生活の長期化による健康被害も懸念される。

警戒レベル3の発令から約2週間が経過した時点で火口からの溶岩流の全長は約2・5キロに達し、落石は約3キロまで拡大していることが確認され、立ち入り禁止区域を超える可能性も指摘されている。さらに大雨が降った場合、堆積した岩石や火山灰を含んだ土石流が発生する可能もあり、州当局の専門家が注意を呼び掛けている。

その一方で、夜間に光る溶岩流を一目見ようと国内外から観光客が押し寄せている。州当局は危険区域に近づかない限り安全と強調し、展望台など安全に火山を見物できる場所のリストを公開し観光客の訪問を歓迎している。しかしソーシャルメディアでは「観光より避難民に寄付すべきだ」などの意見も聞かれるなど、政府が「災害ツーリズム」を推進しているとの批判も出ている。

14日に現地を視察したマルコス大統領は、「早く鎮静化するに越したことはないが、噴火は数カ月続く可能性もある」と述べ、避難民に対する少なくとも3カ月間の食料などの支援を想定して準備するよう関係当局に命じた。また避難生活の長期化に備え浄水器の設置を行うよう指示を出した。

火山大国でもあるフィリピンでは、ほかにも複数の火山で警報が出ている。マニラ首都圏近郊のバタンガス州に位置するタール火山も警戒レベル1が発令されており、6月上旬にガスの排出が増加し火山性スモッグが発生。周辺地域の学校が休校になるなどの影響が出ている。またビサヤ地方ネグロス島にあるカンラオン火山も警戒レベル1となっており、マヨン火山を含めたこれら三つの火山上空は、万が一の噴火に備え航空機の飛行が禁止となっている。

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