ASEAN発足55年、11ヵ国体制へ 分断の軋轢克服が課題に

コロナ禍一服、成長センターに回帰

11月10日、プノンペンでカンボジア国王を表敬訪問する東南アジア諸国連合(ASEAN)各国の首脳ら(AFP時事)

1967年の「バンコク宣言」によって設立された東南アジア諸国連合(ASEAN)は、今年で55年を迎えた。原加盟国はタイ、インドネシア、シンガポール、フィリピン、マレーシアの5カ国。84年にブルネイが加盟、現在はインドシナ3カ国とミャンマーを加え、10カ国で構成されているASEANは、2025年にも東ティモールを迎え入れて11カ国体制になる。課題は、対中関係と政治体制の違いからくる分断の軋轢(あつれき)をどう乗り越えるかだ。(池永達夫)

東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の総人口は約6億3000万人と欧州連合(EU)の4億5000万人を上回るだけでなく、経済規模においても地域ながら米中日欧印に次ぐ世界第6位を目指す。

メルクマールとなったのは2015年のASEAN経済統合だ。この年、域内の貿易自由化や市場統合などを通じて成長のスピードアップを目指すASEAN経済共同体(AEC)が発足した。

ASEAN古参組のタイ、インドネシア、シンガポールなど6カ国間ではすでに貿易品目の99%の関税が撤廃されている。後発組もまもなく99%程度の自由化が実現する。

新型コロナ禍でサプライチェーンの中断と物流・人的交流の分断がASEANでも発生したものの、「止血帯」はほぼ取り除かれ、通常の経済関係に回帰しつつある。

ASEAN域内には、1人当たりGDPの高さで日本を凌駕(りょうが)するシンガポールから、ミャンマー、カンボジア、ラオスなど開発途上国が存在。横並びのEUに比べ縦に長いのが特徴だ。

先頭集団をリードするシンガポールは金融、サービス産業を中心に経済構造を転換している。タイやマレーシアは製造業で体力をつけ経済発展を維持してきた。

また、チャイナプラスワンの受け皿となりつつあるベトナムや、人口2億4500万人を擁し国内に巨大マーケットを持つインドネシアなど、伸び盛りの国もある。このダイナミズムがASEANの魅力だ。

ASEANは1997年のアジア通貨危機や2008年のリーマンショックを乗り越え、安定した経済発展を続けている。少子高齢化が進み労働力のピークアウトを迎える中国と違い、ほとんどの国で労働力人口が老人や子供人口より多い人口ボーナスが継続中だ。

さらに、都市化進展に伴う中間層増大で輸出入ともに世界4位という成長市場となり、生産拠点としても重要性を増しつつある。

ただ、ASEANに重くのしかかる歴史的課題をクリアするには多大な労力と政治力が必要になってくる。南シナ海の領有権問題ではベトナムに加え、フィリピン、マレーシア、ブルネイなどが中国と領有権を争う。中国と南沙領有権問題で対立するフィリピンなど一部加盟国は、米国との軍事上の連携を強めつつある。南シナ海の領有権問題で、米国排除を画策する中国との妥協点を探るのは困難を伴う。

一方、ベトナムは西沙諸島に近い南部沿岸地域で、軽量兵器で武装した「海上民兵」を増強する動きを見せると同時に、南沙諸島で埋め立て作業を大幅に強化中だ。中国が9年前、4年の歳月をかけて実施した埋め立て作業の広さには遠く及ばないものの、長い牛の舌が垂れるように南シナ海全域に「九段線」を引いて中国固有の領土だと主張する中国に対し、ASEANが主導して南シナ海における紛争防止に向けたルールとなる行動規範策定をのませられるかどうか正念場を迎える。

さらに来年2月にクーデター2年を迎えるミャンマーに対する措置など、ASEAN内部に政治的溝が深まる懸念材料もある。

来年、ASEAN議長国となるインドネシアのジョコ大統領は、23年のASEAN標語を「成長の中心、ASEANは重要」に決定した。

加盟国の結束を維持し、成長センターとしての力を強化しつつ世界経済の牽引(けんいん)役としての役どころをASEANが示せるかどうか、来年は議長国インドネシアのリーダーシップと調整能力が問われる年になる。

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