トップ国際アジア・オセアニア終盤のフィリピン大統領選 マルコス氏/一騎打ち、優勢保つ

終盤のフィリピン大統領選 マルコス氏/一騎打ち、優勢保つ

ロブレド氏/反政権票分散、苦境

ボンボン・マルコス元上院議員(EPA時事)

9日に投開票を控えるフィリピン大統領選では、世論調査の結果から、独裁政治や戒厳令などで知られる故マルコス元大統領の息子であるボンボン・マルコス元上院議員と、レニー・ロブレド副大統領の一騎打ちが確実視されている。(マニラ・福島純一)

民間調査会社のパルスアジアが発表した最新の世論調査によると、大統領選でマルコス氏に投票するとの回答が56%に達し首位を維持。マルコス氏を追うロブレド氏は23%と前回より1%の減少で伸び悩んでいる実態も浮き彫りとなった。

3位は7%でパッキャオ上院議員、4位は4%のマニラ市長のモレノ氏と、両候補は上位から大きく引き離されている。マルコス氏とロブレド氏の一騎打ちになるのは必至の情勢だ。前回の副大統領選でロブレド氏に僅差で敗北したマルコス氏にとっては、まさに雪辱戦となる。

大統領選の争点は麻薬や汚職の撲滅を掲げ、親中外交を進めたドゥテルテ政権の継承か否かに絞られている。ロブレド氏は副大統領に就任後、麻薬戦争での超法規的殺人を激しく糾弾してきたが、ドゥテルテ氏の支持率は歴代大統領で最高を記録し続け、退任直前となった現在も約70%を維持。反ドゥテルテのスローガンがなかなか有権者には響きそうになく、ドゥテルテ政権の継承を明言しているマルコス氏が有利な立場にある。

レニー・ロブレド副大統領(EPA時事)

また反ドゥテルテを掲げる野党勢が早い段階で統一候補の擁立に失敗し、候補者が互いに撤退を要求し合うなど、有権者に見苦しい印象を与える場面も目立った。パッキャオ氏もドゥテルテ政権の汚職を批判し対決姿勢を鮮明にしており、反ドゥテルテ票の分散が避けられない状況はロブレド氏に不利と言える。

また、マルコス氏とペアを組んでいる副大統領候補のサラ・ドゥテルテ氏の存在も大きい。サラ氏はドゥテルテ大統領の長女であり、同大統領一家の地元ダバオ市の市長で、一時は大統領選に出馬するとの噂もあったが今回はマルコス氏にその座を譲った形だ。副大統領選の世論調査でも55%の支持率で首位を快走している。

ドゥテルテ大統領がマルコス氏を後継指名せずとも、大統領の身内と共闘するというインパクトは非常に大きい。マルコス氏はドゥテルテ政権を継承すると明言。政権与党のPDPラバンの一部派閥から支持されていることも高支持率を後押している。

独裁政権や戒厳令下での人権違反など、国際社会ではマイナスイメージが強い故マルコス元大統領を父に持つマルコス候補だが、フィリピンではあまり過去にこだわらない国民性もある。汚職で有罪になったものの政界に復帰したアロヨ元大統領のような政治家も少なくない。

さらに選挙戦略として故マルコス元大統領の独裁時代を美化するような投稿がSNSを中心に流れており、これを新鮮に感じる若者の有権者も多いようだ。特に新型コロナウイルスによる都市封鎖で社会的苦境が続き、マルコス家にある種の古き良きフィリピンやノスタルジーを感じる有権者も少なくない。

しかしながらマルコス氏は、ロブレド氏が一対一の討論を要求しても、高い支持率を背景に拒否し続けている。マルコス陣営は前回の副大統領選で僅差でロブレド氏に敗北した過去を踏まえ、今回は選挙でインターネットを中心としたイメージ戦を展開している。その一方で、ロブレド氏を批判するフェイクニュースを拡散しているという黒い噂(うわさ)も付きまとう。

選挙を目前に控えた3日には、有力な新興宗教団体の「イグレシア・ニ・クリスト」がマルコス氏とサラ氏への支持を正式に表明した。この支持により信者からの数百万票が上乗せされると見込まれており、マルコス氏とサラ氏の両候補は、逃げ切りをさらに加速させると見られている。

イグレシア・ニ・クリストは、前回の大統領選でドゥテルテ氏を支持し、当選に貢献したほか、マルコス候補の父親である故マルコス元大統領を支持したことでも知られ、選挙のたびに存在感を示している。

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