
フィリピン中部に上陸した台風2号(フィリピン名アガトン)による洪水や土砂崩れの被害が拡大し、死者はこれまでに179人に達した。政府は9000人以上の人員を投入して救援と捜索活動を行っているが、行方不明者は依然100人を超えている。農業やインフラの損害も拡大しており当局が対応を急いでいる。(マニラ・福島純一)
フィリピンの東の海上で発生した台風2号は、4月10日にフィリピン中部のビサヤ地方に上陸。それほど勢力も強くないため当初は強い警戒は発令されておらず、上陸後に弱体化も確認されていたが、移動速度が遅く同じ地域に停滞する時間が続いたことで集中的な雨をもたらした。
特にレイテ州バイバイ市では大規模な地滑りが集落を襲い、これまでに120人の死亡が確認されている。台風2号による死者は20日の時点で179人に達し、行方不明者は110人となっており、捜索が進むにつれさらに犠牲者が増える可能性もある。
最も被害が大きかったバイバイ市では、2回にわたって地滑りが発生したことが住人の証言から分かっている。救援活動に駆け付けた人々が2回目の地滑りに巻き込まれて被害が拡大する結果となった。
内務自治省が警察や消防局などから約9000人の救助人員を被災地域に送り、捜索活動を行っている。しかし、依然として地盤が緩いなど二次災害の危険もあることから、バイバイ市の一部地域や56人が死亡したアブヨグ町などでは捜索活動が停止されている。
バイバイ市当局は地滑りが起きた地域を居住に適さない危険地域として指定し、住人たちに家屋に戻らないよう警告した。しかし生き残った住民によると、昨年12月にスーパー台風・オデットが接近した際も地滑りの兆候はなく、安全だと認識していたと証言している。
農務省によると台風2号による農業への被害額が14億ペソ(約34億円)に達した。特に農地への被害が甚大でコメへの被害が約6億ペソを占めているという。
国家災害リスク削減委員会によると台風で損害を受けた家屋は1万1000戸以上に達した。また公共事業道路省によるとインフラへの被害は14億ペソ以上に達し、特に被害が大きかったビサヤ地方だけで13億ペソを占めていることが分かった。
依然として不通になっている道路や橋も多く、当局が復旧を急いでいる。
バイバイ市があるレイテ州では、2006年にもセントバーナード町で大雨と地震が原因と考えられる大規模な地滑りが集落をのみ込み1000人以上が死亡する悲劇が起きている。貧弱な交通網による重機不足などで救援活動が困難を極め行方不明者も多く、集落跡は全体が墓地となった。
ドゥテルテ大統領はイースター(復活祭)の17日に被災地を訪問し、避難所で救援物資の配布などを行った。復活祭前の休暇で多くの人々が移動する時期に台風が停滞したことも災禍を大きくした。
嵐で破壊された家屋を目の当たりにしたドゥテルテ氏は、復興には長い時間が掛かるとしながらも、住む場所をなくした被災者に新しい家の提供を約束。また大統領選挙の最中でもあり、自身の6月までの大統領任期を踏まえ、次期政権に温暖化に伴う気候変動による激甚化する自然災害への対応にベストを尽くすことを望んでいると訴えた。