選挙の季節迎えるタイ 与党内で内紛、揺らぐ連立

不人気と経済低迷で期待は野党に
タイでアヌティン副首相やサクサヤーム運輸相らプラユット政権の連立与党第2党プームジャイタイ党の閣僚7人が先月、閣議を欠席した。連立政権内の内紛は、来年の3月までに予定される総選挙を見越した政治的確執が引き起こした。(池永達夫)

タイ政界に衝撃を走らせた連立与党第2党の閣議ボイコット騒動は、バンコク市民の足として定着している高架鉄道BTSの事業権延長をめぐっての確執が、直接の原因だ。プラユット首相兼国防相を支える与党第1党国民国家の力党の意向が反映される内務省と意見が合わず、閣議をボイコットした格好となった。

2021年4月26日、バンコクのタイ首相府で開かれた会議に臨むプラユット首相(右端)(タイ政府提供・時事)
2021年4月26日、バンコクのタイ首相府で開かれた会議に臨むプラユット首相(右端)(タイ政府提供・時事)

だが真因は来年の3月までに予定される総選挙を見越した政治的確執にある。

連立政権第1党内でも内紛は起きている。

国民国家の力党は1月、プラユット首相と対立したタマナット幹事長ら党所属の下院議員21人を除名した。同幹事長は農業・協同組合副大臣だった昨年9月、政権不信任案可決を画策したとされ、詰め腹を迫られたとの見方がもっぱらだ。これにより下院(定数500)で与野党の議員数が伯仲、下院は今年に入ってから4度も出席議員数不足で定足数割れを起こし、延会になるなど政治の安定度を欠くようになった。

下院の任期は来年3月までと、約1年後までに実施される総選挙を見据えて各政党の駆け引きが熱を帯びている。とりわけコロナ禍による経済の低迷で連立与党への国民の信認度は低迷を続け、野党への期待が高まる情勢が与党のいらだちを募らせている。

タイ国立スワンドゥシット大学が最近実施したオンライン世論調査では、「首相になってほしい人」では、野党第2党でリベラル派の前進党のピタ・リムジャラーンラット党首(41)が28・7%の支持を集め1位だった。

前進党は新未来党を前身とし、旧軍政を継承した現政権の不正を厳しく追及してきた。3年前の総選挙で80議席を獲得、野党第2党に急浮上した新未来党は2年前、憲法裁判所から党首のタナトーン氏が党に違法な融資をしたと認定され解党命令を受けた。その前進党のピタ党首は、2位のプラユット首相兼国防相の21・3%を引き離してのトップだったのだ。

また「次期総選挙で最も議席を獲得する政党」では、最大野党のタクシン派タイ貢献党が32・9%とトップだった。2位はガウクライ党で25・2%、政権与党第1党の国民国家の力党は24・6%で3位、与党第3党の民主党は6・2%で4位だった。

2014年のクーデターでタクシン派政権を奪取したプラユット首相は8年近い長期政権を維持しながら、首相としても政党としてもその人気度は、野党にトップの座を奪取されてしまっている。

来年早々にも予定される次期総選挙を占うのは、5月に実施されるバンコク都知事選だ。知事が公選制なのはタイの77都県中バンコクだけ。残る76県の知事は、内務省から派遣される官僚知事だ。その意味でもバンコクの都知事選で誰が選出されるのかというのは、次期総選挙を読み解く指標として特別視される。

その都知事選も現職の与党出身者よりタクシン元首相派インラック政権で運輸相を務めたチャチャート・シティパン氏(55)が、世論調査では圧倒的支持を得ている。タイ国立開発行政研究院(NIDA)が1カ月前に18歳以上のバンコク都民を対象に実施したバンコク都知事候補の支持率調査では、チャチャート氏が37・2%の支持を獲得しトップだった。2位は現職のアサウィン・クワンムアン・バンコク都知事(退役警察大将)で12・1%だった。

タクシン派政権をクーデターで追放した陸軍司令官だったプラユット氏ながら、首相の座に就き8年近い長期政権を担当すると、国民の不満がたまりやすく求心力は落ちてくる。

わけても20年初頭から続くコロナ禍で、昨年度の経済成長率は、前年比1・6%増加しただけ。輸出が好調だった製造業が牽引(けんいん)し、2年ぶりにプラス転換した一方、往来制限の影響で観光業の回復が遅れ、成長率は低い水準にとどまった。

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