アフリカ中部のコンゴ(旧ザイール)東部で政府軍と反政府勢力「3月23日運動(M23)」の衝突が激化している。国連の発表によると、先月下旬の戦闘で700人以上が死亡、2800人が負傷した。(長野康彦)

隣国ルワンダが支援しているとされるM23によるコンゴ東部への進軍は、周辺国を巻き込みながら地域紛争へと拡大する可能性が懸念されている。今年に入ってM23はコンゴ東部の主要都市ゴマとブカブを制圧し、さらに別の都市への進軍が報じられる中、東アフリカと南部アフリカの国々もこの問題を重視。今月初めにタンザニアで開かれたこれら地域の指導者による会議では、交渉と即時停戦を促す合意は得られたものの、戦闘を終わらせるための具体的な提案はなされなかった。
コンゴのチセケディ大統領は、2021年末にM23が活動を再開した際、地域内外の同盟国に支援を求めた。ルワンダと緊張関係にあるブルンジは、コンゴ軍と共に戦うために軍を派遣。またタンザニアも軍を派遣し、ルワンダと関係が悪化しているウガンダも兵士を投入している。
紛争解決を目的として設立された国際的な非政府組織である「国際危機グループ(ICG)」のアフリカ局長であるムリティ・ムティガ氏は、チセケディ大統領にとってこれは「多妻制の結婚を操るようなものだった」とアフリカのメディアに述べ、広大な国土の領土保全のため綱渡りのような外交を強いられていると指摘する。
M23とは、09年3月23日、コンゴ反政府組織の人民防衛国民会議(CNDP)とコンゴ政府との間で交わされた和平協定の日にちなんで名付けられたもので、12年に約300人のCNDP兵士によって結成された。M23は政府が和平協定を履行していないとして反乱を起こし、翌年、周辺諸国10カ国を含めた和平合意がなされたが、21年末活動を再開、現在に至る。
コンゴ政府は、M23をルワンダの代理軍と見なしており、コンゴ東部に広がる数兆㌦規模の鉱物資源を不法に利用することを目的としていると非難している。国連の専門家によれば、M23は約4000人のルワンダ兵の支援を受けているとされる。
M23の反乱の背景には、ルワンダの長年の懸念がある。1994年のルワンダ虐殺に関与したとされるフツ系の反政府勢力が、無法地帯と化したコンゴ東部で活動を続けているというものだ。
ルワンダのカガメ大統領は、チセケディ大統領がコンゴの少数派ツチ系の懸念を無視し過去の和平合意を軽視していると非難している。ルワンダ虐殺では数十万人のツチが殺害されており、M23の構成員の多くはコンゴ出身のツチである。
こうした状況を受け、国連安全保障理事会は21日、即時かつ無条件の停戦を求める決議を全会一致で採択した。だが、長年にわたる国連平和維持軍の存在も含め、平和への取り組みはほとんど成果を挙げていない。ルワンダとコンゴの双方が譲れない一線を引いている中、M23は今後、約1600㌔離れた首都キンシャサまで進軍することを宣言しており、紛争解決の見通しは立っていない。