トップ国際アフリカ岐路に立つ仏のアフリカ政策 反発高まる旧植民地政策

岐路に立つ仏のアフリカ政策 反発高まる旧植民地政策

政治的不安定で中露を利する

7月30日、ニアメーの在ニジェール・フランス大使館前に集まる」デモ隊(AFP時事)

今年に入り、アフリカのフランス旧植民地、マリ、ブルキナファソ、ニジェール、ガボンで反政府勢力によって起きたクーデターは、長年、既得権益を持つフランスの排除に繋(つな)がっている。「アフリカの反乱」に不快感を示すフランスだが、ウクライナ紛争以降、中露やトルコ、インド志向が強まるアフリカの変化にどう向き合うのか、対アフリカ戦略は大きな岐路に立たされている。(パリ・安倍雅信)

フランスは長年、旧宗主国としてアフリカの旧植民地国で既得権益を維持してきた。同時に近年は、マリなど西アフリカ・サヘル地域でのイスラム過激派の掃討作戦に仏軍が駐留し、治安対策に関わってきた。

反政府勢力やテロの脅威にさらされる旧植民地で仏軍は多くの犠牲者を出したにもかかわらず、アフリカではフランス排除の空気が広がっている。この10年続いたフランサフリック(フランスが影響力を持つ仏・ベルギーのサハラ以南の旧植民地)の是非を問う議論も活発化している。

権益確保の狙いもあったが、これまでフランスは開発援助、インフラ整備継続のために莫大(ばくだい)な資金を投じてきた。ただ、フランスでは支援疲れと仏国民の間に高まる不安や不満でフランサフリック支援は限界に達しているとの指摘が強くなっている。

21世紀に入ると、天然資源獲得と覇権主義による中国のアフリカ進出が拡大。武器とインフラ建設、財政支援の中国マネーに経済的困窮、政治的不安定な国々は飛びついた。結果として環境破壊や大量の中国人労働者動員で労働環境を悪化させ、債務の罠に苦しむ国が増えた。

一方、ロシアは民間軍事会社ワグネルが反政府勢力の武力支援に加担し、旧植民地マリでは脆弱(ぜいじゃく)な政府との契約で政府軍の軍事訓練や軍事ロジスティクス供与、対テロ活動を請け負い、仏軍を排除。ニジェールではクーデターを起こした反政府勢力軍がワグネルの支援を得ているとの見方もある。

ワグネルの創設者プリゴジン氏は死亡したとされるが、プーチン政権はワグネルのアフリカでの活動を制限するつもりは今のところない。政治的不安定な国々の混乱に乗じて入り込むワグネルによって、マリにあったフランスの軍事基地はニジェールに移動を余儀なくされ、そのニジェールからの排除も迫られている。

フランスのマリでの活動はテロ掃討のためだったにもかかわらず、「マリを支配するための仏駐留軍」とのイメージに変化し、「植民地時代からの根深い反仏感情に火が付いた」と指摘されている。背景には、この10年間、脱西洋化で敵対する中国やロシアによって、旧植民地の西アフリカの反仏感情が煽(あお)られたことも無視できない。

カズヌーヴ元仏首相は、フランスが専制主義の伝統の残る旧植民国で、治世者の腐敗や不道徳な行為に無関心を装ってきたことを認めている。結果的に既得権益にしがみつく政治家を憎悪する地元の若い世代の反仏感情が助長されたことを認めた。

しかし、フランスをはじめ、ヨーロッパ諸国がアフリカを放棄するという選択肢はない。特にウクライナ紛争でロシアの天然ガスとの決別を宣言している欧州連合(EU)の中でもフランスは、世界有数の天然ガス埋蔵量を誇る旧植民地アルジェリアとの関係強化に動いている。

マクロン大統領は、ガボンのクーデターがフランサフリックの反乱に発展することに危機感を示したが、やれることは限られている。間接統治の植民地政策を展開した英国は、ポスト植民地政策で文化の多様性を認めたのに対して、フランスは直接統治を行い、文化や価値観を押し付け、独立後も統治者との癒着を続けた。

フランスは政教分離の原則から国内でもイスラム教徒が着用するロングドレス、アバヤの学校での着用が9月から禁止され、イスラム教圏の仏旧植民地では反仏感情が助長されている。フランスは今、対アフリカ政策で戦後、最大の岐路に立たされている。マクロン氏の孤軍奮闘が結果を結ばなければ、仏政権に厳しい目が向けられそうだ。

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