
中国が支配力を強めるレアアース(希土類)を巡り、先進7カ国(G7)は協調した対応に乗り出した。依存構造からの脱却が急務となる中、先進7カ国首脳会議(G7サミット)では、中国を念頭に単一国への依存度を2030年までに60%以下へ引き下げ、可能な限り50%にする目標で合意した。
レアアースは戦闘機や電気自動車(EV)、スマートフォン、半導体、風力発電など幅広い分野に不可欠な資源となっている。現在、世界の採掘量の約7割、精製能力の約9割を中国が握る。こうした状況に対し、G7首脳が供給網強化について数値目標を打ち出したのは今回が初めてだ。
もっとも、現実のハードルは高い。米戦略国際問題研究所(CSIS)の重要鉱物専門家、グレースリン・バスカラン氏は「野心的な目標であり、達成は容易ではないだろう」 との見方を示す。
現在、日本や米国、オーストラリアなどで政府支援と連携したプロジェクトが相次いで発表されているものの、30年までに商業生産に到達する案件はその一部にとどまる見通しだ。
例えば、米国では、オーストラリアのレアアース開発会社ライナスによるテキサス州でのレアアース精製プロジェクトが停滞している。米国防総省の支援を受けた案件であるにもかかわらず、許認可の遅れやコスト増加が足かせとなっている。
さらに、米政府が対中依存脱却の中核として育成する米鉱物企業USAレアアースは、ブラジルやフランスへの事業拡大を打ち出しているものの、競合企業から技術を巡る訴訟を抱えるほか、精製技術も実証試験の段階にとどまっている。
一方、中国は、政府が国策として進めてきた産業支援のもと、採算を度外視した生産で価格を抑え込み、「略奪的価格設定」によって競合企業の収益性を圧迫し、撤退に追い込むことで、数十年にわたり市場の支配力を築き上げてきた。
中国はレアアースの優位性を背景に輸出規制を「武器化」しており、昨年4月にはトランプ政権の関税への対抗措置として重希土類7種に輸出許可制を導入した。その結果、輸出が急減し、日米欧では自動車メーカーが数週間で供給不足に陥り、一部で生産削減が生じた。
中国政府は、昨年11月の高市早苗首相による台湾有事に関する国会答弁を受けて対日圧力を強め、今年1月には対日輸出管理を強化。その結果、レアアースの対日輸出が減少している。
脱中国依存を推進するため、トランプ政権は、中国による低価格戦略と供給支配に対抗し、重要鉱物の価格を支える枠組みを構築しようとしている。
バンス副大統領は、2月に米首都ワシントンで開催された重要鉱物閣僚会合で「われわれは同盟国や友好国からなる貿易圏を創設したい。それは、米国が自国の産業基盤を確保できるようにしつつ、同時にその圏全体で生産を拡大していくものだ」と訴えた。具体的にはレアアース生産の各段階で最低価格を設定し、安価な輸入品には関税をかけて下限を維持する、といった策を示した。
ただこの構想について、今回のG7サミットでは、価格維持によるコスト上昇の影響や補助金を出した場合の財政負担への懸念から、欧州の一部の国が慎重姿勢を示したと報じられている。
G7は脱中国依存に向けて重要な一歩を踏み出したが、その実効性を高め、取り組みを加速させるには、なお多くの課題が残されている。
(外報部・山崎洋介)
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