トップ国際【連載】揺れる国際秩序とG7(2)米、イラン合意「成果」で主導権

【連載】揺れる国際秩序とG7(2)米、イラン合意「成果」で主導権

先進7カ国首脳会議(G7サミット)の会場に到着したトランプ米大統領=15日、フランス東部エビアン(代表撮影・時事)
先進7カ国首脳会議(G7サミット)の会場に到着したトランプ米大統領=15日、フランス東部エビアン(代表撮影・時事)

 「私がボスだ」――。フランス東部エビアンで開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)最終日の会合に約1時間遅れて姿を見せたトランプ米大統領は、各国首脳を前に冗談めかしてこう語った。笑いを誘った一言ではあったが、サミット直前にイランとの合意を発表し、外交成果を掲げて会議に臨んだトランプ氏の立場を象徴する一幕だった。

 今回のG7は、トランプ氏にとって防戦の場ではなかった。米国とイランはサミット直前、戦闘終結に向けた合意に達したと発表。中東情勢の緊張が原油価格や世界経済を揺さぶる中、トランプ氏は危機を沈静化させた指導者として会議に参加した。各国首脳は合意を歓迎し、イランの核兵器保有を阻止する重要性を改めて確認。ホルムズ海峡の航行再開やエネルギー供給網の安定化も議題となり、米国の対イラン外交はサミット全体の主要テーマとなった。

 G7首脳声明は、米イラン合意を「歴史的機会」と位置付け、トランプ氏の指導力にも言及。トランプ氏にとっては、自らの対イラン外交を同盟国に追認させる形となった。一方で、会議の場では合意の先行きに慎重な姿勢もにじませた。トランプ氏はイランが合意を守らなければ攻撃を再開する可能性にも触れ、対話と圧力を組み合わせる従来の姿勢を崩さなかった。

 その上で、トランプ氏が次の課題として掲げたのがウクライナ戦争だった。サミットの場で「次はウクライナだ」と述べ、同国のゼレンスキー大統領やロシアのプーチン大統領との協議に言及した。中東危機の沈静化に続き、欧州最大の戦争でも米国が主導権を握る意思を示した形だ。

 トランプ氏はこれまで、戦争の早期終結を掲げ、ロシアとの交渉による停戦を模索してきた。欧州側には、米国がウクライナ抜きでロシアと妥協し、領土問題などで譲歩を迫るのではないかとの懸念があった。北大西洋条約機構(NATO)離脱の示唆や欧州駐留米軍撤退をめぐるトランプ氏の発言も、米欧間の不信を深めていた。

 しかし、今回のサミットでは、トランプ氏が欧州と正面から衝突する場面は目立たなかった。G7首脳は、「ウクライナへの揺るぎない支援」を確認し、ロシアの石油・ガス部門への圧力を強める方針で一致。トランプ氏も、ロシアへの追加制裁やウクライナ支援に前向きな姿勢を見せた。

 一方で、成果の持続性にはなお不透明感が残る。米イラン合意は、核開発や弾道ミサイル、地域での影響力をめぐる問題など未解決の課題が多い。実際に合意後もイスラエルはレバノンで親イラン民兵組織ヒズボラへの攻撃を続けており、トランプ氏はG7の場で、イスラエルによるヒズボラとの戦闘について「長引かせすぎており、犠牲者も多すぎる」と異例の苦言を呈した。

 ウクライナ戦争でも、トランプ氏が今後どこまで対ロ圧力を維持するかは見通せない。G7では米欧の足並みがそろったように見えたが、和平交渉の進め方や支援負担をめぐる不一致は残る。

 それでも「米国第一」を掲げるトランプ氏にとって、今回のG7は、自らの影響力を示す格好の舞台となった。最終日に飛び出したトランプ氏のジョークに、各国首脳は和やかな笑顔を見せたが、その裏には米国に歩調を合わせる同盟国の緊張感もにじんでいた。

(ワシントン川瀬裕也)

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