日本サッカー協会が2005年に「2050年までにワールドカップで優勝する」という壮大な長期目標を掲げた当時、世間の反応は冷ややかなものだった。「あと半世紀ほどで、本当に世界の頂点に立てるのか」――そんな雰囲気が漂っていた。
しかし、日本代表が遂げた目覚ましい成長ぶりと、選手たちが世界の第一線で見せる獅子奮迅の活躍を目の当たりにしている今日、その未来予想図はあながち絵空事ではないと思えてくる。
「最高の景色を」――。

日本代表の森保一監督が合言葉として掲げ、前回大会の激闘が幕を閉じたその日から、チームが牙を研ぎ続けてきた戦いがついに始まる。
1998年のフランス大会で悲願の初出場を果たして以来、日本代表は今回の大会で8大会連続8度目の出場となる。
しかし、これまでの最高成績は02年の日韓大会、10年の南アフリカ大会、18年のロシア大会、そして記憶に新しい22年のカタール大会で記録した「ベスト16」である。
今大会、F組に所属する日本代表は、日本時間の15日にオランダ、21日にチュニジア、26日にスウェーデンと予選リーグ(グループステージ)を戦う。出場国数が48に増えた今大会は、各組の上位2チームに加え、各組3位のうち成績上位のチームを合わせた計32チームが決勝トーナメントへ進出する変則システムが採用されている。
日本代表は主将の遠藤航選手(リバプール)がけがで離脱。W杯開幕日に新主将に就いた板倉滉選手(アヤックス)が遠藤選手の思いを胸に戦うことになる。
今回、日本中が注目するのは、いまだ到達したことのない領域、すなわち悲願の「ベスト8進出」を成し遂げられるかどうかだ。
日本、「優勝」を目標に 初戦「オランダ経験組」が鍵

振り返れば、日本はあと一歩のところで何度も涙をのんできた。ロシア大会・決勝トーナメント1回戦では、優勝候補のベルギーを相手に堂々と渡り合い、一時は2点をリードする展開をつくった。しかし、同点に追い付かれると、試合終了間際のコーナーキックから非情な逆転負けを喫した。
前回のカタール大会では、ドイツとスペインというW杯優勝経験を持つ世界屈指の強豪国を撃破し、大金星を挙げた。だが、決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦では、試合を優位に進めながらも追い付かれ、延長戦の末に臨んだPK戦(1―3)で力尽きた。
しかし、その悔しさを糧にした森保ジャパンは、そこからの4年間でさらなる進化を遂げた。親善試合の舞台ではあったものの、ドイツに挑んだリベンジマッチでは4―1と敵地で圧倒。さらにトルコを4―2、イングランドを1―0、そして南米の雄ブラジルをも3―2で破るなど、世界の超強豪国を次々と撃破していった。欧州のメディアからは、対戦後に相手監督が相次いで解任されたことも相まって一時期「欧州キラー」と称され、今大会における最大のダークホースとして警戒される存在へと変貌を遂げた。
現在の日本は、三笘薫選手(ブライトン)や南野拓実選手(モナコ)といった、攻撃の絶対的な主軸をけがで欠く苦境にある。しかし、それを補って余りある豊富な人材が揃(そろ)っている。今回選出された26人のうち、国内のJリーグに所属する選手はわずか3人と史上最少だ。一方で、世界最高峰とされる欧州「五大リーグ」(ドイツ6人、イングランド3人、スペイン1人、イタリア1人、フランス2人)に所属する選手が13人を数え、世界水準のタレントがズラリと名を連ねる。
その中でも、今回のグループステージを占う上で注目したいのは、オランダリーグを経験する6人の存在だ。現在オランダのクラブに籍を置くDF渡辺剛選手、FW上田綺世選手(以上フェイエノールト)、DF板倉滉選手、DF冨安健洋選手(以上アヤックス)、FW小川航基選手(NECナイメヘン)、そして過去にフローニンゲンやPSVアイントホーフェンで活躍したMF堂安律選手(アイントラハト・フランクフルト)らである。
前回のカタール大会の初戦では、当時ドイツ・ブンデスリーガに所属していた選手8人をピッチに送り込み、ドイツを2―1で破る歴史的大金星を呼び込んだ。森保監督が今回もその「成功データ」を踏襲するならば、初戦のオランダ戦には前述のオランダの「トータル・フットボール(全員攻撃・全員守備)」を熟知するメンバーをスタメンに並べ、一気に勝負を仕掛けてくる可能性は極めて高い。強敵オランダに焦点を当てて勝ち点を奪い、続くチュニジア、スウェーデン戦を優位に進めて決勝トーナメントへ進出するのが理想的なシナリオとなるだろう。
「最高の景色を」――森保監督率いる史上最強の蒼(あお)き戦士たちが、まずは悲願のベスト8、そしてその先にある頂点へと向かって、今、誇り高く挑む。
(佐野富成)(終わり)
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