
サッカーのワールドカップ(W杯)2026年大会で、優勝候補の一角に挙げられるのがブラジル代表だ。過去最多5度の優勝を誇る「サッカー王国」は、史上初の外国人監督となるカルロ・アンチェロッティ氏の下、02年日韓大会以来24年ぶりの世界王座奪還を狙う。
ブラジル代表最大の話題は、イタリア出身のアンチェロッティ監督の就任だ。ACミランやレアル・マドリードなど欧州の名門クラブを率い、欧州5大リーグ制覇と欧州チャンピオンズリーグ5度の優勝を成し遂げた世界屈指の名将。近年のW杯で結果を残せなかったブラジルサッカー連盟(CBF)は、伝統を重んじる国内の反発も覚悟の上で改革に踏み切った。
アンチェロッティ氏の就任に際しては、「王国を外国人の手に委ねるのか」との声もあった。しかし、カカ氏やロナウジーニョ氏ら多くのブラジル人選手を指導した確かな経験を持ち、「世界最高の監督がブラジルに来た」と歓迎する論調は少なくない。
ピッチ上で最大の注目を集めるのは、やはりネイマール選手だ。ブラジル代表歴代最多得点記録を持つエースは長年チームの象徴として君臨してきたが、W杯優勝だけは手にしていない。
14年のブラジル大会では負傷に泣き、18年のロシア大会と22年のカタール大会でも頂点に届かなかった。近年は負傷やコンディション不良から代表引退説も流れたが、最終メンバー発表で選出されると涙を浮かべたと報じられた。現地メディアは「最後の挑戦」「王の帰還」と大きく伝え、話題となった。
34歳のネイマール選手にとって、今回が最後のW杯となる可能性は高い。代表通算得点ではペレ氏を上回ったものの、ブラジルで真の伝説と認められるには世界一が必要。悲願のW杯制覇は、ネイマール選手に残された最大の目標だ。
名将とネイマール選手を支えるのが新世代のスターたちだ。攻撃陣の中心はレアル・マドリードのヴィニシウス・ジュニオール、ロドリゴ両選手。共に欧州最高峰の舞台で活躍するアタッカーで、アンチェロッティ監督にとってはクラブ時代から知る愛弟子(まなでし)でもある。19歳のエンドリッキ選手ら若手も台頭し、新旧融合は今大会の大きな武器となる。
一方で、CBFがアンチェロッティ監督に託した役割は今大会後も続く予定だ。近年は欧州勢との差が指摘される中、史上初の外国人監督招聘(しょうへい)は、2030年大会も見据えた代表強化の第一歩との評価もある。
プライドの高い「王国」が変革を受け入れた背景には、代表チームそのものを現代化しようとする危機感も垣間見える。
守備陣では主将マルキーニョス選手が最終ラインを統率し、ゴールマウスには世界屈指のGKアリソン・ベッカー選手が立つ。個々の能力では世界最高水準だが、近年のW杯では勝負どころであと一歩届かなかった。個の力を組織として機能させることができるかが、アンチェロッティ監督に課せられた最大の使命だ。
王国ブラジルは大きな転換点を迎えている。ネイマール選手にとっては悲願達成への挑戦であり、アンチェロッティ体制にとっては未来への改革の第一歩でもある。24年ぶりの世界制覇を成し遂げ、「セレソン復活」を世界に示すことができるのか。注目の大会となりそうだ。
(サンパウロ綾村悟)
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