トップ国際【連載】米中会談と覇権争いの行方 (下)先端技術巡る「AI冷戦」

【連載】米中会談と覇権争いの行方 (下)先端技術巡る「AI冷戦」

トランプ米大統領(左)と米半導体大手エヌビディアのフアン最高経営責任者(CEO)=4月30日、ワシントンのホワイトハウス(AFP時事)
トランプ米大統領(左)と米半導体大手エヌビディアのフアン最高経営責任者(CEO)=4月30日、ワシントンのホワイトハウス(AFP時事)

 米中首脳会談では両首脳の友好ムードが演出されたものの、タイム誌が「部屋の中の象」(存在が明白なのに避けられている問題)と表現した人工知能(AI)技術の覇権争いには踏み込まず、対立構造は残されたままだ。

 今後の経済覇権のカギを握るAI技術を巡っては米中の攻防が激しさを増している。先行する米国は先端AIチップの輸出規制を強化し、中国の台頭を抑えつつ優位を固めようとしている。他方で中国は、米国からの制裁解除を求めつつも、ディープシーク(深度求索)など国産モデルを急速に成長させ、差を縮めつつある。

 会談を控えた時期にも、対立は表面化した。4月23日、ホワイトハウスは中国企業を名指しして「意図的かつ産業規模で米国のAI技術を盗用している」と非難し、対抗措置を示した。米国側では中国の急速な開発スピードの背景に米技術の不正利用があると主張する。

 一方、中国は同月下旬、米メタによる中国発のAI企業マナスの買収を国家安全保障を理由に阻止した。同社は現在シンガポールに本拠を移しているが、中国は国境を越えた異例の介入に踏み切った形だ。AI技術を外資に渡さないという姿勢を、明確に示したことになる。

 こうした中で行われた今回の会談には、米半導体大手エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)も急遽(きゅうきょ)参加した。トランプ氏は昨年12月、同社の先端AIチップ「H200」の対中輸出を、「強固な安全保障を維持する」という条件付きで承認した。

 H200は一世代前の技術ながら、華為技術(ファーウェイ)による国産チップを大きく上回る性能を持つとされる。この対中輸出に対して米国内では、軍民融合の中国では軍事転用を防げないとの懸念から批判も出ている。

 これに対しホワイトハウスのAI担当責任者デービッド・サックス氏は、一定の条件下で供給を認めることで、華為など制裁下の中国企業が米国の最先端技術に追い付くことを防げると主張する。完全遮断ではなく、「管理された供給」で主導権を握ろうという発想だ。

 逆に中国側には、米AI技術への依存に対する警戒心もうかがえる。米メディアによれば、政府の指示を受け中国企業は発注を控えているという。米商務省のラトニック長官も、中国が「国内産業への投資を優先するため、企業にチップ購入を認めていない」と証言しており、今後の中国の対応が注目される。

 一方、中国はAIの軍事転用を国家戦略の柱に据え、開発を急速に進めている。北京で昨年9月に行われた軍事パレードでは、戦闘機と編隊飛行できるAI搭載無人機が披露された。ニューヨーク・タイムズ紙によれば、米国防総省は自国の無人戦闘ドローン計画が中国に後れを取っているとの懸念が高まっている。米国も巻き返しを図り、米新興防衛企業アンドゥリルが自律型無人機の量産を開始するなど対応を急ぐ。

 強力なAI技術は、銀行や電力網を麻痺(まひ)させ得る高度なサイバー攻撃を可能にし、テロ組織による悪用の危険もある。こうしたリスクを踏まえ、AIを核軍縮に近い枠組みで国際管理すべきだとの議論が高まっている。しかし今回の米中首脳会談ではAIリスク管理の協議に大きな進展はなく、今後に委ねられた。

 米中双方がAIを国家戦略の中核に据える中、自国だけが開発に制限をかければ相手国に先行を許すとの警戒が根強く、安全策づくりは進みにくい。友好ムードとは裏腹に、「AI冷戦」はむしろ長期化しそうだ。

(外報部・山崎洋介)

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