
「私は誰かが独立することを望んでいない」――。15日、トランプ米大統領から台湾に対する驚きの発言がFOXニュースのインタビューで飛び出た。中国の習近平国家主席に台湾を支持しないよう圧力をかけられた米中首脳会談後であり、台湾への武器売却も中国の対応によっては「交渉材料」にする考えも示した。
米中首脳会談で習氏はトランプ氏に「(台湾問題を)適切に対処しなければ、中米は衝突し、関係全体を極めて危険な状況に向かわせることになる」と脅迫にも取れる警告を行っていた。習氏は「中華民族の偉大な復興」を掲げ、毛沢東ですらも達成できなかった「台湾統一」の実現を不可欠だと位置付けている。そのために、憲法で定められていた2期10年の国家主席の任期制限を撤廃し、現在異例の3期目に就任。自身の正当性と4期目続投のためにも「台湾統一」は習氏にとって譲れない「核心的利益」だ。
そもそも台湾側にとっての「台湾独立」とは、中国共産党に負けて中国大陸から台湾に逃げ込んだ蒋介石らが率いる国民党によって始まった中華民国の統治体制からの独立であり、中華人民共和国からではない。中国にとっては「台湾」であっても「中華民国」であっても台湾の土地に別の統治体制があることが許せないため、意図的に「独立反対」という言葉で「台湾統一」を覆い隠しているにすぎない。
米大統領としては訪中前に理解しておくべき内容のはずだが、会談後に冒頭の発言が飛び出した。今回のトランプ氏の指す「独立反対」が仮に中国側の見方で語られたのであれば、中台の統一促進に繋(つな)がる可能性も否定できない。
台湾では米中首脳会談以前から「米国は台湾を見捨てるのではないか」という疑念や不信感が根強い。米中首脳会談に同席したルビオ米国務長官は「米国の台湾政策は変わっていない」と強調しているものの、自国の利益のために台湾の安全保障を揺るがす内容すらも中国との取引材料とするトランプ氏の姿勢には不信感が募らざるを得ない。1979年に米国が台湾と断交し、中国と国交を樹立した「過去の裏切り」のトラウマが台湾人の脳裏にちらついている。
中国に融和的な国民党系シンクタンク「国家政策研究基金会」が15日に発表した世論調査によると、台湾は米中に対し同じ距離感でバランスをとるべきとするのが44・3%、米国とより仲良くすべきが27・4%、中国とより仲良くすべきが12・5%。米国を「信頼している」と「どちらかというと信頼している」が36・4%、「信頼していない」と「どちらかというと信頼していない」が41%となったという。
台湾の頼清徳総統は台湾が大国間の取引材料となることを危惧しているのか、会談の前後で台湾は「主権を有する独立国家」との立場を繰り返し強調。台湾の未来は台湾人が決めるべきであるものの、米国の後ろ盾がなければ中国が実際に攻撃を行えばもちろんのこと、現状維持すらも難しいのが実情だ。仮に米国の武器売却計画に変更があれば、頼政権の防衛戦略を揺るがすだけでなく、台湾の人々が心理的に中国側の望む「平和的統一」に流れる可能性もある。
もし台湾が中国化してしまえば、ホルムズ海峡のように台湾海峡が「武器化」され、中国が日本に揺さぶりを掛けてくることが予想される。米国の台湾政策は日本にとって他人事(ひとごと)ではない。大国間の思惑とトランプ氏の発言に振り回されずに米政府の動きを注視する必要がある。(宮沢玲衣)






