トップ国際【NEWSクローズ・アップ】日本の対北制裁 密かに緩和? 代議員の総連幹部が再入国 関係改善呼び水か

【NEWSクローズ・アップ】日本の対北制裁 密かに緩和? 代議員の総連幹部が再入国 関係改善呼び水か

東京都千代田区にある朝鮮総連中央本部ビル=昨年1月、森啓造撮影
東京都千代田区にある朝鮮総連中央本部ビル=昨年1月、森啓造撮影

 今年3月に開催された北朝鮮の最高人民会議で代議員(国会議員)に再選された在日本朝鮮人総連合会の傘下団体トップが、先月下旬に訪朝した後、日本に再入国していたことが分かった。北代議員は日本独自の対北制裁の一環である「北朝鮮を渡航先とした再入国の原則禁止」の対象。再入国の許可は事前公表されておらず、臆測を呼んでいる。(編集委員・上田勇実)

 再入国が明らかになったのは、在日本朝鮮商工連合会の朴忠佑会長(76)。同連合会結成80年に際し数十人規模の訪朝団を率い、先月21日に中国・北京経由で平壌入りした。関係者によると、朴氏は訪朝団と共に25日夜、羽田空港から再入国した。朴氏は滞在中、趙甬元・最高人民会議常任委員長と面談した。

 朴氏は2019年に初めて北朝鮮代議員に選出され、今回は「第234号チョンソン選挙区」から出馬し、再選された。朝鮮中央通信によると、今回、在日朝鮮人で北代議員に選出されたのは5人。朴氏以外に総連の許宗萬議長、朴久好第1副議長、朝鮮大学校の韓東成学長、在日本朝鮮民主女性同盟の姜秋蓮・中央委員長がいる。

 拉致・核・ミサイルの被害や脅威を理由にした日本独自の対北制裁の一環として総連最高幹部の再入国が禁止されて以降、日朝ストックホルム合意(14年)に伴う制裁の一時解除で許議長が訪朝したのを除けば、同措置に反した総連最高幹部の再入国が確認されるのは異例だ。

 朴氏の再入国を巡り、関係者の間では臆測が飛び交っている。ある元総連関係者は「制裁の事実上の緩和だが、日本政府が密かに認めた格好。『会いたい』という高市首相から金正恩氏へのメッセージかもしれない」と述べた。

 日朝関係筋によると、北代議員の総連幹部の一人はかつて「日朝関係を改善させたいなら北代議員になっている総連幹部の再入国を認めればいい」と周囲に漏らしていたという。

 また朴氏も代議員に初当選した19年、総連系団体のインタビューに「(代議員になって)ウリナラ(北朝鮮)に行けなくなったことはあまり考えないようにしている。去年、制裁対象の裵益柱副議長(当時)が平昌オリンピックに行けた例もあるので、条件によって変わる」と答え、自身の訪朝実現に期待感をにじませていた。

 朴氏の再入国には、総連とつながりが深い自民党議員が仲介に立ち、日朝関係改善の呼び水にしたい高市早苗首相がこれを了承した可能性もある。朴氏が高市首相の金正恩氏宛て親書を持参したのではないかとする見方も出ている。

 ただ、朴氏の再入国は対北制裁の一部緩和に相当する重大事案。特例だとしても政府による事前説明がなかったことに異論も出そうだ。

 一方、北朝鮮が昨年から総連関係者らの訪朝受け入れを大幅に拡大させていることを巡り、再教育が主な目的ではないかとの見方が出ている。

 「金正恩氏が韓国との統一を拒否し、金日成の統一路線を否定したことに対し、総連をはじめ在日朝鮮人社会ではいまだに不満がくすぶっている。正恩氏はこの路線転換についてこられない高齢者を隠居させ、柔軟思考の若者に世代交代させる考えだろう。かつてマルクス・レーニン主義から主体思想に国家理念が変わった時、老幹部が排除されたのと同じことが起きる可能性がある」(前出の元総連関係者)

 金正恩氏は総連に対する「13項目の指示」(24年3月)で、韓国との関係断絶や南北統一の拒否などを要求し、昨年5月の総連結成70周年に寄せた書簡では「総連の結成世代」の功績を評価しつつ、「新進世代の教育」で若い人たちが「新時代の在日朝鮮人運動の主人公」になるよう促した。今月下旬に開かれる、総連の最高決議機関である全体大会でも、そうした正恩氏の意向が反映される可能性がある。

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