
世界12カ国のシンクタンクの代表らが参加する国際会議「東京会議2026」がこのほど、都内で開かれた。世界が米国やロシアに象徴される「力の秩序」に翻弄(ほんろう)される中、国際協調や秩序をどう取り戻すかが議論されたが、見通しは明るくない。(豊田 剛)
東京会議は10~12日、米国とイスラエルによるイラン攻撃で国際社会に不安が広がり始める中で開かれた。11日の公開フォーラムでは、岸田文雄元首相、インドネシアのユドヨノ元大統領、イタリアのジェンティローニ元首相、第2次トランプ米政権でウクライナ担当特使を務めたケロッグ氏らが基調講演した。その後、講演者らが国際協調や多国間主義の立て直しなどをテーマに討論した。
ユドヨノ氏は「ルール中心の秩序から、パワーがより直接的に作用する秩序へ」移行していると表現。このままでは国際経済の安定は損なわれると警鐘を鳴らした。ジェンティローニ氏は、民主主義国家が連携してルールに基づく国際秩序を守る必要があると強調し、多国間協力の重要性を説いた。
岸田氏も同様に、「力の論理」がはびこる現代においても「一つの大国だけでは解決できない地球規模の課題がある」と指摘。日本のあるべき姿として、日米同盟を基軸とした安全保障政策と、多国間主義に基づいたアジア各国との連携の両立が重要との認識を示した上で、「現実への対応と理想の追求、双方を追い求めることが大事だ」と訴えた。
講演者が口をそろえて国際協調を訴える中で、独自色を出したのはケロッグ氏だった。「トランプ政権の外交は本質的に取引であり、常に『アメリカ・ファースト』を中心に据えている」と訴えた。
参加者からトランプ氏の外交手法に懸念が示されると、ケロッグ氏は「(トランプ氏は)自ら語ってきたことを実現しようとする人物だ」と述べ、困難な国際情勢を安定させ、「ソフトランディング」(軟着陸)を目指していると説明。中国との関係でも対話による取引が可能との見方を示した上で、「国際社会がより実効的な対応を取る必要性」を訴えた。
イラン攻撃については、「世界中でテロを支援・資金提供することを主要目的とし、核兵器を追求している」ことを根拠に、トランプ大統領が取った行動は「適切」だったと強調した。
大国による力の支配は「ニューノーマル」(新常態)になった――。
会議を主催した民間非営利団体「言論NPO」は会議に先立ち、世界のシンクタンクの専門家らを対象に実施した調査結果を発表した。調査期間は1月23日~2月23日の約1カ月間。欧米諸国やアジア諸国、ブラジルなど26カ国の国際政治や安全保障の専門家293人が回答した。
米国による関税政策などを念頭に、大国が「力」によって世界秩序を支配・管理する「力の秩序」が一時的な現象かどうかを尋ねた設問では、62.1%が「今後の国際社会の中心的特徴になる」と回答。「一時的なもの」と答えたのは11.9%にとどまった。
「長期的な世界像」については、米国と中国による二極体制が形成されるとの見方は強くなく、44.9%が複数の勢力圏が交錯する「不安定な多極世界」の到来を予想。大国間の対立激化により「重大な危機に直面する」という回答は21.8%だった。
この結果について、言論NPOの工藤泰志代表は、「規範や制度を守る世界ではなく、複数の勢力の影響力が交差する不確実な均衡にある」と述べ、「包括的な多国間協力ではなく、限定協調が現実的」と厳しい見方を示した。一方で、欧州連合(EU)や日本などミドルパワー(中堅国家)の連携が重要になると強調した。






