世界各国の元元首や調査研究機関の代表らが国際情勢を議論する「東京会議2026」(言論NPO主催)は11日、都内で公開フォーラムを行い、第2次トランプ政権でウクライナ担当特使を務めたキース・ケロッグ氏が基調講演した。以下は講演要旨。

米国のイラン攻撃は適切
トランプ大統領について語る際、雑音や個人的な感情ではなく、米国から見た現実の「力学」を伝えなければならない。
トランプ政権の外交は本質的に取引であり、常に「アメリカ・ファースト」を中心に据えている。
2月28日にトランプ大統領がイランに対して取った行動は適切だった。イラン政権は、世界中でテロを支援・資金提供することを主要目的としており、さらに核兵器を追求し、「アメリカに死を」「イスラエルに死を」と唱えている。大統領は自分のために行動しているのではない。米国が今後、過去47年間のような中東問題に直面しないようにするためだ。
米国の進む道示す3文書
第2次トランプ政権は、第1次政権とは大きく異なる。2025年11月、ホワイトハウスは年次の国家安全保障戦略(National Security Strategy=NSS)を発表。26年1月には国防総省が国家防衛戦略(National Defense Strategy)を公表した。26年2月には国務省が26~30年度の機関戦略計画(Agency Strategic Plan)を発表した。
これら三つの文書は、米国の外交政策の進むべき道を示す極めて重要なものだ。
国家安全保障戦略では、米国の最優先目標として国家の安全と主権の維持が掲げられている。具体的には、①国境を完全に管理する②国家インフラを整備する③世界最強で致死性の高い先進的軍隊を育成する④信頼性の高い近代的な核抑止力を維持する⑤世界で最も強く革新的な経済を築く⑥強固な産業基盤を構築する――取り組みを行う。
外交政策では、西半球に焦点を当てている。これは歴史的なモンロー主義の延長だ。欧州、中東における平和と安定を確保し、その後、アフリカへと続く。同盟国のネットワークと負担分担を通じて、「力による平和」を実現する。
国家防衛戦略は、国家安全保障戦略を軍事面で具体化したもので、「力による平和」「アメリカ・ファースト」「戦士の精神」「同盟国との負担分担」という理念が掲げられている。つまり、米国の利益にとって最重要な部分にリソースを集中させ、他の分野では同盟国の役割を拡大するという考え方に基づく。
主要な安全保障上の課題は、中国、ロシア、イラン、北朝鮮だ。
戦略は①本土防衛②中国の抑止③インド太平洋地域で同盟国と負担分担④防衛産業基盤の強化――の四つの主要な努力目標に基づいている。
同盟国と連携し、力による平和実現へ
国務省の戦略計画では、六つの優先事項が定められている。①米国国家安全保障②西半球の安定(モンロー主義の再確立)③インド太平洋の平和と安定④欧州との文明的同盟の再建⑤米国の経済・技術的優位⑥米国の利益を最優先とする対外援助――。
米国が重視するのは西半球と自国民の安全。同時に、世界各地で同盟と負担を分担することも重要だ。日本の役割は極めて大きい。米国と日本は1951年の日米安全保障条約以来、緊密な同盟関係を築き、現在も日本国内には約5万3000人の米軍が駐留している。日本政府は防衛費を国内総生産(GDP)比2%まで引き上げる方針を打ち出し、反撃能力の整備など防衛力の強化を進めている。
インド太平洋地域では日本、米国、インド、オーストラリアが連携している。共同訓練や軍事作戦は絶えず行われており、海上や空での活動、部隊の展開を行っている。中国が注視しているが、これこそが抑止力による平和だ。日本は単なる基地提供国ではなく、真のパートナーだ。
極東地域において、日本は重要な存在だ。日本が強くなれば、中国は行動を再考せざるを得なくなり、地域全体の安定につながる。
戦況はロシアに有利ではない
25年12月31日まで大統領補佐官およびロシア・ウクライナ担当特使を務めていた立場から、ウクライナの問題についても触れたい。ロシアはこの戦争に勝っていない。戦争はすでに5年目に入ったが、ロシアが獲得した領土はわずか約1%だ。
ロシア軍は120万~140万人の死傷者を出したと推定されている。ソ連はアフガニスタンで1万8000人の損失で撤退したが、その比ではない。
一部メディアはロシアが大きく前進しているように報じているが、キーウもオデッサも占領できていない。戦況はロシアに有利とは言えない。逆に、フィンランドとスウェーデンが北大西洋条約機構(NATO)に加盟した。
ウクライナ軍は粘り強く戦っている。ロシアは民間人を攻撃している。学校・病院・市場へのミサイルやドローン攻撃を行っている。一方で、米国と欧州による経済制裁がロシア経済に影響を与えており、とりわけ石油関連の制裁が軍事資金に打撃を与えている。
トランプ大統領と同盟国による制裁は大きな影響を与えている。ロシアの原油を輸送する「影の船団」にも制裁が行われ、収入は減少し、軍事資金が減っている。
和平交渉では、安全保障に関する議論で一定の進展が見られるものの、領土問題が依然として最大の争点。ロシアはドンバス地域の占領地の保持を求めているが、ウクライナ側が強く抵抗している。
トランプ大統領が戦争終結させる
プーチンは元KGB(旧ソ連国家保安委員会)の諜報員であり、信用できない。われわれの忍耐が切れるまで交渉を引き延ばそうとしている。
戦争の終結には政治的解決が不可欠で、双方が一定の成果を主張できる形での合意が必要だ。トランプ大統領は自由世界の指導者として戦争を終わらせるだろう。バイデン政権は4年間、ロシアと直接対話しなかったが、トランプ大統領は定期的に対話している。戦争終結が近づいていると確信している。






