
第2次トランプ米政権の対中関係は、関税戦争の激しい応酬で緊張が頂点に達し、その後は急速にトーンが和らぎ、10月の米中首脳会談では、双方が一定の「成果」を持ち帰る形で合意が成立した。
トランプ大統領はもともと、2020年のパンデミック期に見せた中国総領事館閉鎖や中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)への制裁など対中強硬のイメージも強かった。しかし今回、中国の習近平国家主席との会談前後に、「G2」発言まで飛び出し、対中姿勢が軟化したのではないかという懸念も広がった。
ただし、米国が交渉において劣勢だったわけではない。中国が生産シェアを握るレアアース(希土類)が強調されるが、米国にもボーイング社の部品などの強力なカードがある。中国の民間航空は代替不能な高度な部品に依存しており、供給が止まれば航空網が麻痺(まひ)するとされている。
昨年12月に発表された国家安全保障戦略では「西半球重視」が注目を集めているが、台湾防衛やウクライナの存続を米国の「核心的利益」と位置付けている点も見逃せない。ドイツの政策アナリスト、ウルリッヒ・スペック氏は「予想よりもはるかに孤立主義的ではなく、同盟・友好国に対してもはるかに肯定的である」と指摘する。
トランプ氏は、台湾で何が起きるかは「習氏次第だ」と発言するなど、不安を招いたが、実際には抑止の手は緩めていない。昨年12月には、総額約111億㌦という異例の規模で台湾向け武器売却を承認した。
これには、高機動ロケット砲システム(HIMARS)、ハープーン、ジャベリンなど高性能兵器が含まれ、米誌ナショナル・インタレストは、こうした兵器で「島を要塞(ようさい)化」することで、中国側に「侵攻は損失に見合わない」と思わせる抑止効果を狙った措置だと分析している。
また今月15日には、米台間で貿易合意が成立し、経済・技術面での関係強化も進んだ。
貿易戦争が「休戦」となる一方で、今月3日のベネズエラへの攻撃は、長年にわたって同国に関与してきた中国に打撃を与えた。また、2017年以来「包括的戦略パートナーシップ」を結ぶイランも制裁圧力や軍事攻撃により弱体化した。
共に中国の「一帯一路」構想の一環だったが、その足場が相次いで崩れ、対外影響力を後退させた。同じく反米勢力のキューバも、ベネズエラ原油への依存が高く、供給の急減で深刻な危機に陥っている。
気まぐれで、衝動的に動いている、と見られがちなトランプ氏だが、実際には背後に大きな戦略があるとも指摘される。
米ハドソン研究所中国センター所長のマイルズ・ユー氏はポッドキャストの番組で、トランプ政権が中国やイラン、ベネズエラ、ロシア、キューバを一体として捉え、圧力を加えていると説明する。「中国が主導しており、ロシアはウクライナ戦争のため中国から資金提供を受け、イランは中東、ベネズエラは南米の不安定要因となっていた」と述べた。
トランプ氏は昨年11月のCBSテレビのインタビューで米中関係について「非常に厳しい競争だ。われわれはいつも彼らを見ているが、彼らもいつもわれわれを見ている」と語ったように、同氏の念頭には常にライバルとしての中国があるようだ。今後の駆け引きがどう展開するか注目される。
(アメリカ総局長・山崎洋介)
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